本研究では、犬のネオスポラ感染症がイヌの頭蓋内腫瘍性疾患(脳腫瘍)発症への関与を明らかにすることを目的とし以下の実験を実施した。平成25年度は主に血清および脳脊髄液検体、腫瘍生検サンプルの収集、MRIを設置した協力小動物診療施設より髄膜腫サンプルの収集およびその解析を実施した。まずイヌの神経症状の発症とN.caninumの関連性を明らかにするために、神経症状が疑われた症例を中心に130検体、神経症状を呈していない症例70検体の血液サンプルを収集して、24年度に実施したIFA検査に加え、ELISA検査による抗体保有状況の調査を実施した。神経症状を示した症例の血清学的陽性検体数は38/130頭(28.7%)、対照群の血清学的陽性率は8/70(11.1%)であり、有意に陽性率が高かった(p=0.0081)。MRI上の特徴として、130頭中、21頭においてDural tail signが認められ、Dural tail sign陽性症例の抗体陽性率は61.9%であり、Dural tail sign(-)の抗体陽性率22.9%と比べて有意に高い値を示し、N.caninumの抗体陽性率と髄膜腫との間に関連性がある事が示唆された。本年度において、組織学的検索に必要なサンプリングが可能な24検体において、免疫組織学的検索および病理組織学的検索をおこなった。24検体中16検体がN.caninum抗体陽性であった。髄膜腫の症例は14例あり、14例中12例で抗体陽性と判定され、うち11例でwestern blottingで陽性と判定された。いずれの組織においてもタキゾイトやシストは検出されなかった。また脳脊髄液は大槽穿刺からの採取により、32検体のサンプルを入手できた。そのうち、髄膜腫が疑われたものは12症例であったが、いずれもCSF-PCRでの陽性症例は得られなかった。
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