研究課題
ES細胞(胚性幹細胞)とiPS細胞(人工多能性幹細胞)をネコで作製し、これらを血液細胞に分化させるために、本年度は以下の研究成果を得た。1.顕微授精からのネコES 細胞株の樹立ネコ未成熟卵子と精子を用いてピエゾマイクロマニピュレーターで顕微授精を行った。各種条件を検討することで、ピエゾマイクロマニピュレーターを用いた顕微授精によって、効率的に胚盤胞期胚を作成することに成功した。さらに、胚盤胞期胚からネコES細胞の初代コロニーを得ることに成功している。2.ネコiPS 細胞から血液前駆細胞の分化誘導昨年度に樹立に成功したネコiPS細胞株を用いて、血液細胞への分化を試みた。すなわち、ネコiPS細胞を浮遊培養し、これらの細胞を分化させることで胚様の形態をした細胞塊(胚様体)を作製した。次に胚様体を各種サイトカインを用いて培養したところ、コロニーアッセイ法において赤芽球性前駆細胞であるBFU-Eに形態が類似したコロニーが確認された。以上のことから、作製したネコiPS細胞が血液系細胞に分化することを証明した。
2: おおむね順調に進展している
研究の目的として、平成25年度はネコ多能性幹細胞を樹立し、これらの細胞を血液細胞へ分化誘導することを目指してきた。その結果、①顕微授精からのネコES細胞株の樹立に関しては、ピエゾを用いた顕微授精によって効果的に胚盤胞期胚の作製が可能となり、ネコES細胞のコロニーが得られている。さらに、②昨年度に樹立したネコiPS細胞を浮遊培養することで、胚様体を作製した。これらの胚様体を種々のサイトカインを添加して培養したところ、コロニーアッセイ法において赤芽球性前駆細胞であるBFU-Eと思われるコロニーが確認された。以上のことから目的に対しておおむね順調に進展していると判断した。
iPS細胞は、細胞株によって特性が異なることが示されており、血液系の細胞に分化しやすい株としにくい株があると考えられる。そのため、研究を推進するためには、複数の細胞株が樹立されていることが望ましい。また、iPS細胞とES細胞は非常に類似した特性を持っていることが知られており、ネコES細胞を樹立し解析する必要がある。以上のことから、ネコiPS細胞およびES細胞株の樹立を今後も積極的に取り組む必要がある。さらに、ネコiPS細胞から赤芽球性前駆細胞を作製することに成功しているが、今後、この細胞を赤血球まで効果的に分化させるプロトコールを確立する必要がある。赤血球への分化にはエリスロポエチンなどのサイトカインが重要な働きをしていることが知られており、これらのサイトカインの組み合わせや濃度などを詳細に解析することで研究が進んでいくと考えている。
iPS細胞から血液に分化させるには、多くのサイトカインが必要となる。また、特に赤血球や血小板などへ特異的に分化させるためには、これらのサイトカインの組み合わせや濃度などをより詳細に解析する必要がある。今回は赤血球の前駆細胞までの分化に成功しているが、その後の細胞への分化研究はまだ行っていないため、それらに必要なサイトカインや培養器具などはまだ未購入であり、それによって次年度使用額が生じている。次年度使用額は翌年度分の助成金と合わせて、iPS細胞やES細胞の培養に必要な培地や器具を準備するともに、iPS細胞から血液細胞への分化誘導に必要な各種サイトカインを購入する予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Stem Cells Dev.
巻: 22 ページ: 2026-2035
doi:10.1089/scd.2012.0701.
http://www.vet.osakafu-u.ac.jp/cell/cell.html