研究課題
本研究は、極めて病態進行が速く、効果的な治療法がない猫乳癌を対象とし、癌の根源である乳癌幹細胞を標的としたヘッジホッグ(Hh)阻害剤の抗癌幹細胞効果を明らかにし、獣医医療へと展開することを目的とする。計画している研究項目は、①Hh阻害剤が癌幹細胞増殖に及ぼす効果、②乳癌幹細胞移植マウスモデルにおける抗腫瘍効果、③Hh阻害剤耐性に関わるHhシグナル関連遺伝子変異の同定および検査システムの構築および④遺伝子変異の保有率および腫瘍病態機構の解明の4つである。本研究の標的細胞である癌幹細胞はsphere(浮遊細胞塊)assay、aldefluor assayなどで濃縮することが可能である。平成24年度は、癌幹細胞の濃縮、自己複製能の評価に有効なsphere assayを用いて猫乳癌細胞株に含まれる癌幹細胞の自己複製能を阻害する低分子化合物を探索した。使用した4細胞株は、Hh阻害剤GDC0449は濃度依存性にsphereの数の減少、大きさおよび形状の変化がみられ、aldefluor assayでは癌幹細胞の割合が減少していた。また他のHh阻害剤(シクロパミン、GANT61)も同様に、いずれも濃度依存性にsphere数の減少、大きさおよび形状の変化が観察された。また、それらの通常の接着性培養における増殖能も濃度依存性に細胞増殖能の低下が観察された。ヒト固形癌ではHh阻害剤GDC0449抵抗性に必要なsmo遺伝子変異の存在が報告されているため、同領域の猫smo遺伝子の塩基配列の決定を行った。健常猫におけるsmo遺伝子配列はGDC0449抵抗性に関連するヒト遺伝子変異は確認されなかった。以上の成果より、猫乳癌細胞株におけるHh阻害剤のin vitro抗腫瘍効果が明らかとなり、猫乳癌モデルマウスにおける抗腫瘍効果の検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度の研究は、計画調書通り遂行することができた。また、平成25年度に実施予定していた遺伝子解析を行うことができ、in vitro解析に用いた細胞株のモデルマウスの作出にも成功した。
平成25年度は、平成24年度の研究成果を踏まえて、さらに発展させる。癌幹細胞の自己複製能を阻害剤GDC0449を用いて猫乳癌モデルマウスにおける抗腫瘍効果を検討する。猫乳癌モデルマウスに阻害剤を投与し、形成される腫瘍の容積、個体を経過観察し、エンドポイントで安楽殺後、それらの腫瘍について病理組織学的検索を行い、抗腫瘍効果を解析する。また、ヒト固形癌ではGDC0449に抵抗性に必要なsmo遺伝子変異の獲得が知られており、猫乳癌組織におけるsmo遺伝子変異の有無を確認するとともに、GDC0449耐性猫乳癌株を作製し、遺伝子変異の同定および耐性機構の解明を行う予定である。得られる成果をを基に、獣医医療へ臨床応用できるに否かを総合的に評価する。
当初の計画通り行う。
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