研究課題/領域番号 |
24780316
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
田島 剛 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (60508878)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 第四胃変異 / 平滑筋 / 中鎖脂肪酸 / TLR4 / 一酸化窒素 / ドコサヘキサエン酸 |
研究実績の概要 |
本研究では乳牛の第四胃変位発症の背景に存在する第四胃運動機能障害の発症メカニズムを明らかにするため、第四胃平滑筋の収縮機構がどのように破綻しているかの解析と、その破綻に対する脂肪酸の関与を明らかにすることを目的としている。 今年度は、①高濃度のパルミチン酸処置により第四胃の運動機能障害がおこることを組織レベルで明らかにし、そのメカニズムはこれまでラウリン酸やミリスチン酸でみられたものと同様にTLR4受容体を介するもので、誘導されたiNOSによって産生されたNOが直接的にはたらくものであることが示唆された。 ②第四胃平滑筋の収縮調節機構として、4型(cAMP特異的)や5型(cGMP特異的)のホスホジエステラーゼおよびプロテインキナーゼCγが関与することを明らかにした。これらが中鎖脂肪酸処置によりどのような影響を受けるのか興味が持たれる。 ③継続して行ってきた牛血液中の脂肪酸定量の結果、健康牛と第四胃変位発症牛との間でラウリン酸量に有意な差は認められなかった。一方で第四胃変位の発症とドコサヘキサエン酸(DHA)量の増加に有意な相関が認められた。 ④ウシの第四胃組織中にはこれまでヒトやげっ歯類で報告されているような消化管常在型マクロファージが存在することを組織学的検討およびFACS解析にて確認した。 以上の結果をこれまでの知見と合わせて考えると、分娩後にエネルギーバランスが負になったとき、血中のDHAが低下することで中鎖脂肪酸によるTLR4シグナルの感受性が増加するとともに、脂肪蓄積部位である第四胃で局所的に脂肪酸の代謝がおこることで、常在型マクロファージにおける中鎖脂肪酸によるTLR4シグナルが亢進し、iNOS介したNO産生が増加して第四胃の運動機能が障害され、第四胃変位につながるのではないかと考えられた。また第四胃変位の早期診断マーカーとして血中DHA量の定量が有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血中遊離脂肪酸の定量に時間を要したものの、当初計画していた第四胃平滑筋組織を用いた中鎖脂肪酸の薬理学的解析は順調に進展し、期待していた成果を上げることができた。現在これらの成果を論文投稿中である。。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの成果は2報の学術論文として発表する予定でいる。引き続き、今年度得られた成果から、第四胃の収縮調節にPDE4、PDE5、PKCγの関与が示唆されたことから、合わせてCPI-17などの平滑筋Ca感受性調節機構をより詳しく解析すると共に中鎖脂肪酸によるTLR4シグナルに対して病態生理的にどのような役割を果たすか検討する
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで第四胃変位罹患牛の血液中ラウリン酸およびω-3脂肪酸の定量を試みてきたが、適切な抽出条件の設定ができず、正確な定量を行えずにいた。平成27年2月に入り、定量に適した抽出に成功し、直ちにLC/MSによる定量分析を外部機関に委託したが、実験が年度内に完了しない可能性があり、支払が年度内に完了しない恐れが生じたため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
解析はすでに終了しており、脂肪酸の抽出およびLC/MSに使用する消耗品費および分析委託費の支払いを行う。また、得られた成果を学術雑誌および学会にて発表するための諸経費として使用する。
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