研究課題/領域番号 |
24780317
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
清水 将文 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60378320)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 混植 / 土壌病害 |
研究概要 |
土質の異なる岐阜県内の2圃場でサンプリングしたネギ類(ネギ,ニラ)及びウリ類(キュウリ,カンピョウ),北海道樺戸郡月形町と岩内郡共和町の一般農家圃場(各2箇所)でサンプリングしたネギ及びスイカから根圏土壌を採取し,培養法で根圏細菌相を解析した。その結果,全細菌密度には植物間で目立った違いはなかったが,シュードモーナス選択培地で分離される細菌(Pseudomonas属又はBurkholderia属,以下P/B菌と略記)の生菌密度は,いずれの圃場においてもウリ類よりネギ類で数倍~数百倍高く,特にネギ根圏での生菌密度が高かった。さらに,ネギ類から分離されるP/B菌の多くはFusarium oxysporumの各種分化型に培地上で強い抗菌活性を示し,且つ同菌を土壌接種するとキュウリつる割病の発病を顕著に抑制した。培地上での抗菌活性と発病抑制活性との間に高い相関が認められたことから,P/B菌による発病抑制の主因は抗菌物質であると推測された。拮抗性P/B菌株を16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づき同定した結果,いずれもBurkholderia cepacia菌群に属する種であることが判明した。 ネギとニラ以外のネギ属植物でも同様の傾向が認められるのかを明らかにするため,ポット栽培のネギ,ニラ,タマネギ,ニンニク及びキュウリとトマトの根圏細菌相を解析した結果,タマネギ及びニンニクにも拮抗性P/B菌が多数生息していることが明らかとなった。また,それら拮抗性P/B菌の大半はB. cepacia菌群であった。現在,拮抗性P/B菌の全菌株について,キュウリつる割病に対する発病抑制活性の検定を進めている。さらに,同菌株群が産生する抗菌物質の同定,DGGE法及び次世代シークエンサーを用いたネギ類根圏の細菌相の解析も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究実施計画では、本年度中に次世代シークエンサーで根圏細菌相解析を実施する予定であったが、使用予定であった次世代シークエンサーの納品・設置が大幅に遅れたため実施できなかった。この点を除けば、おおむね予定通りに実験が進んでいる。 研究目的は、拮抗細菌とアリル化合物との関連を重点的に解析し、根圏微生物相を人為的に制御して栽培現場への科学的活用を目指すことにある。本年度の研究により、ネギ類が共通して拮抗細菌を根に集積させる能力を持ち得ることを見出した。この結果は、すなわちネギ類が共通して根から放出する硫化アリル化合物が拮抗細菌集積と密接にかかわっていることを示唆している。従って、研究の目的を達成する礎はおおむね築けたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
24年度に実施できなかった次世代シークエンサー解析を早急に実施し、ネギ類の根圏細菌相を明らかにする。これについては、25年度へ繰り越した研究費を活用する。それ以外については、当初の研究実施計画に基づき、25年度の研究を遂行する。 具体的には、(1)硫化アリル化合物が拮抗細菌の抗菌物質生産に及ぼす影響の解析、(2)拮抗細菌が産生する抗菌物質の同定、(3)拮抗細菌のリボゾーム解析、を中心に行う。実施計画に大幅な変更等はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に繰り越した24年度分研究費は、24年度に採取したサンプルの次世代シークエンサー解析に使用する。 25年度分の研究費は、当初の研究実施計画に基づき、次世代シークエンサー解析、硫化アリル化合物が拮抗細菌の集積や二次代謝に及ぼす影響の解析、拮抗細菌のリボゾーム解析等に必要な試薬類や培地類の購入に使用するとともに、成果発表のための旅費や論文投稿等に使用する。50万円を越える物品は購入しない。
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