研究課題/領域番号 |
24780317
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
清水 将文 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60378320)
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キーワード | ネギ属 / 混植 / フザリウム病 / 根圏細菌 |
研究概要 |
ネギを3‐4ヶ月栽培した土壌を40、60、80、120℃で加温処理し、キュウリつる割病に対する発病抑止性を比較した。その結果、無処理区と40℃処理区には顕著な発病抑止性が認められたが、60℃以上の加温処理区ではその抑止性が失われた。40℃処理で糸状菌、60℃処理でグラム陰性細菌、80℃以上の処理でグラム陽性細菌が死滅することから、ネギ栽培土壌の発病抑止性はグラム陰性細菌に起因するものと考えられた。 ポット栽培の4種ネギ属植物(ネギ、ニラ、ニンニクおよびタマネギ)および非ネギ属(キュウリおよびトマト)から根圏細菌を分離し、病原性Fusarium oxysporumに対する抗菌活性を検定したところ、ネギ属植物からは抗菌性細菌が高頻度で検出された。16S rRNA遺伝子塩基配列の解析から、それら抗菌性細菌はグラム陰性のBurkholderia属菌とPseudomonas属細菌であることが明らかとなった。キュウリ幼苗を用いたバイオアッセイにより各細菌株のキュウリつる割病に対する発病抑制活性を調べた結果、ネギ属由来のBurkholderia属菌とPseudomonas属細菌には高い発病抑制活性が認められた。以上の結果から、ネギ属の混植・輪作によるフザリウム病抑制には、これまで報告してきたBurkholderia属菌に加えて、Pseudomonas属菌も関与する可能性が示唆された。 ネギ由来のBurkholderia菌株が産生する抗菌物質を単離・精製して同定した結果、シデロフォアの一種であるピオケリンであった。また、ネギ属由来のPseudomonas属菌株も大半がシデロフォアを産生していることがプレート検定法により明らかとなった。現在、ネギ属混植・輪作によるフザリウム病抑制におけるシデロフォアの役割について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型次世代シークエンサーのスペックがカタログ記載のレベルに達していなかったため、根圏細菌叢解析を期待していた精度で行えなかった。しかしながら、Burkholderia属細菌に加えてPseudomonas属細菌がフザリウム病抑制に関与する可能性を見出したことと、根圏細菌が産生する抗菌物質がシデロフォアであることを突き止めたことは、申請段階では想定していなかった成果であり、総合的に見ればおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
新型次世代シークエンサーのスペックがカタログ値に到達したので、本年度は根圏細菌叢の網羅解析を進め、ネギ属根圏の優占細菌群の詳細を明らかにする。また、根圏細菌が産生するシデロフォアがフザリウム病抑制に関与するのかを明らかにするため、根圏におけるシデロフォア生合成遺伝子の発現を解析する。 ネギ属根圏への拮抗細菌群の集積を促す根浸出成分を特定するため、ネギ属の根浸出物を分析するとともに、含まれる化合物に対するBurkholderiaおよびPseudomonas属細菌株の走化性を検定する。 さらに、ネギ属の根圏細菌による非ネギ属植物への抵抗性誘導活性も調査し、ネギ属混植によるフザリウム病抑制機構の全体像を明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
三重大学が購入する新型次世代シークエンサーを利用した根圏細菌叢の網羅解析を予定していたが、納入されたシークエンサーのスペックがカタログ値に達しておらず、期待していた精度での解析ができなかったため、計画を中断した。このことが原因で、解析に充てるはずだった費用とその後の実験に要すると見込んでいた金額分が繰り越し金として残った。 次世代シークエンサーのスペックがようやくカタログ値に達したので、根圏細菌叢の網羅解析に本格的に着手する。繰り越し金の大半はその解析に使用し、残りは網羅解析後に展開する実験と成果発表の費用に充てる予定である。
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