研究課題/領域番号 |
24780318
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡邉 健史 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (60547016)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 水田土壌 / 水素生成 / FeFeヒドロゲナーゼ |
研究概要 |
水素は、水田土壌などの嫌気的な環境中の有機物分解過程で生じる極めて重要な中間代謝産物であり、その生成、消費反応は最終分解過程であるメタン生成反応を制御する。水素の生成、消費反応を触媒する酵素ヒドロゲナーゼの中で、活性部位に2つのFeを持つ[FeFe]-ヒドロゲナーゼは水素生成反応を担っている。本研究では、水田土壌微生物の[FeFe]-ヒドロゲナーゼhydA遺伝子を対象とした分子生態学的手法を用いた研究により、水素生成菌群集の生態を明らかにすることを目的とする。 今年度は、これまでに報告されている[FeFe]-ヒドロゲナーゼhydA遺伝子を対象にしたプライマーセット3種類を用いてPCR条件、クローンライブラリー解析を行い、水田土壌試料の解析に最適なプライマーセットを検討した。すなわち、プライマーhydF1/hydR1、FeFe-272F/FeFe-427R、HydH1f/HydH3rを用いてPCR条件を検討した後、これらのPCR産物を用いてクローンライブラリー解析を行った。各プライマーセットの間で検出される微生物群とその割合を比較したが、主要な微生物群が共通しており検出範囲にも大きな差はないと考えられた。そのため、HydH1f/HydH3rを以下の解析で使用することとした。落水および湛水期に採取した水田土壌を対象に解析を進めた結果、多様な分類群に属する細菌と相同性の高いFeFe-ヒドロゲナーゼ遺伝子を検出した。特に、Dehalococcoides、Clostridiales、Desulfovibrionalesに属する細菌のもつFeFe-ヒドロゲナーゼ遺伝子と高い相同性を持つクローンが、検出数はそれぞれで異なっていたものの、落水および湛水土壌のいずれについても多数得られた。したがって、これらに属する菌群が、水田土壌において水素生成反応の一部を担うことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、初年度にこれまでに [FeFe]-ヒドロゲナーゼhydA遺伝子を対象にしたプライマーセットを用いてPCR、クローンライブラリー解析を行い、水田土壌試料の解析に最適なプライマーセットを検討することを計画していた。このステップが最も大切であり、時間もかかることは予想していたが、平成24年度中にこの段階をクリアすることができ、順調に研究が進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、検討したプライマーセットによる群集構造解析法(DGGE法、T-RFLP法、DNAマイクロアレイ法など)を検討、確立する。室内培養実験を行い、土壌の逐次的な還元過程、メタン生成活性の変化と水素生成菌群集の活性の変化、その関係性をRNAを対象とした解析により解明を試みる。また、安定同位体でラベルした植物遺体を利用したStable Isotope Probing (SIP)法により、土壌中で植物遺体の分解に関わる水素生成菌群を明らかにする。合わせて、水田土壌より水素生成菌を集積、分離し、その菌学的特徴を明らかにする。以上より、水田土壌中の[FeFe]-ヒドロゲナーゼ水素生成菌群集の生態を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に則り研究費を使用する。すなわち、土壌の室内培養実験や嫌気性菌の培養に必要な一般ガラス器具、RNA抽出や群集構造解析に必要な消耗品類、SIP法による解析に必要な消耗品類、その他消耗品を中心に使用する。また、機器のメンテナンス、得られた成果を学会等で発表するための旅費や、学術雑誌への投稿料などにも使用する。
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