研究課題/領域番号 |
24780321
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | いわき明星大学 |
研究代表者 |
佐々木 秀明 いわき明星大学, 科学技術学部, 准教授 (30405998)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / イシクラゲ |
研究概要 |
いわき明星大学実験圃場付近の表面土壌の放射能濃度は,放射性セシウムCs-134は1630Bq/kg DW,Cs-137は2530Bq/kg DWであった。放射性ヨウ素I-131は検出されなかった。圃場付近に生育する単子葉類および双子葉類では,地上部へのセシウムの移行は僅かであり,多くは検出限界値以下であったが,いくつかの種でCs-134は29~1020Bq/kg DW,Cs-137は43~1450Bq/kg DWであった。根茎で比較的高い濃度のセシウムが検出され, Cs-134はND~2320Bq/kg FW,Cs-137は39~3300Bq/kg DWであった。一方,土壌表面に生育するラン藻イシクラゲは,Cs-134は32300Bq/kg DW,Cs-137は46200Bq/kg DWと高い値を示した。 福島県のイシクラゲ11産地の放射能濃度を測定した結果,Cs-134は1830~415000Bq/kg DW,Cs-137は2770~607000Bq/kg DWの値が得られた。生育土壌における放射性セシウム濃度は, Cs-134は121~26500Bq/kg FW,Cs-137は194~332000Bq/kg DWであった。イシクラゲと生育土壌の関係を見ると,生育土壌の放射能濃度が高い場所では,イシクラゲの放射能濃度も高い傾向があった。測定サンプルの中で,二本松市のサンプルにおいてCs-134は415000Bq/kg DW,Cs-137は607000Bq/kg FWと高い値が観察されたが,生育土壌の放射能濃度はCs-134が5460Bq/kg DW,Cs-137は6330Bq/kg DWであり,環境中への放射性物質放出直後の降雨時に暴露した藻体と推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
陸上植物とイシクラゲにおける放射性セシウムの蓄積状況を比較したところ,イシクラゲが高濃度に蓄積している事を明らかにする事ができた。また,放射性物質の汚染地域である福島県内11カ所においてイシクラゲを採集,放射性セシウムの蓄積状況を調査した結果,いずれの採集地においても高濃度に蓄積している事を明らかにした。以上の結果より,イシクラゲが多様な自然環境下においても放射性セシウムを蓄積することができ,除染への利用が可能である事を示唆することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は福島県内におけるフィールド調査に力を注いだので,平成25年度には福島県を中心に拡大している周辺各県での調査を実施する予定である。また,イシクラゲによる放射性物質の蓄積のメカニズムを明らかにするために,人工環境下における栽培実験等を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
放射能濃度分析に必要な物品,およびイシクラゲ栽培に要する物品の購入とともに,フィールド調査のための旅費に研究費を使用する予定である。また,研究成果の公表のために学会発表を積極的に行う予定であり,その費用に研究費を使用する予定である。
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