研究課題/領域番号 |
24780326
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
和木 美代子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所 畜産環境研究領域, 主任研究員 (10355092)
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キーワード | アナモックス / 脱窒 / 畜産廃水 |
研究概要 |
畜舎廃水の浄化処理において窒素除去の向上を図るために、硝酸還元反応およびアナモックス反応による窒素除去を検討し、硝酸還元反応のための電子供与体として、農業現場由来電子供与体の利用を試みる。本年度は、畜産、特に酪農現場で入手しやすいイナワラの利用を検討した。イナワラは、均一にするために粉砕し、0.4-1.7 mm のサイズになったものを利用した。物理組成は DM 88 %、 灰分 15 %、 C 41 (乾物中)%、 N 0.5 (乾物中)% であった。また畜産排水の活性汚泥を植種汚泥としてイナワラのBODを測定したところ、110 mg/g であり、酢酸のBOD値が 660 mg/g であったことから、比較的高い値であると言える。 硝酸還元・アナモックス活性を持つ汚泥を供試汚泥とし、供試汚泥および硝酸・アンモニアを含む畜産排水の活性汚泥処理水にイナワラを加え、1ヶ月間培養した後、アナモックス活性を測定した。イナワラ無添加の系をコントロールとして比較をおこなった。培養中の硝酸の減少は、イナワラ添加区においてコントロール区の6倍の値が確認されたが、アンモニアの減少については差が見られなかった。また、イナワラ添加区においては pH の 4.8 までの低下が観察された。培養の前後において、コントロールではアナモックス活性が約2倍に増加したが、イナワラ添加条件においてはアナモックス活性の消失が見られた。この理由として、イナワラは、比較的基質あたりの BOD が高く、無酸素状態で酸発酵がおこり、それに伴うpH の急激な低下によりアナモックス菌が死滅したと考えられた。イナワラの利用においては、添加量の厳密な制御が必要であると予測され、硝酸還元のための電子供与体としての利用は困難であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イナワラの基本的物性およびBODポテンシャルを明らかにし、硝酸還元・アナモックス反応における電子供与体としての効果を検討したが、当該反応での窒素除去に対する期待した結果は得られなかった。イナワラは単位重量あたりのBOD が高すぎることから制御が困難であり、他の電子供与体を検討した方が良いと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度とは異なる農業現場由来電子供与体の影響をバッチ培養で検討を行う。基本的物性およびBODポテンシャルを確認した後、硝酸還元・アナモックス反応における影響を検討する。さらに見いだされた条件を用いて連続処理装置の運転を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額の251,306円は、前年度研究費を効率的に使用して発生した残額であり、今年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。 バッチ培養試験用の試薬、消耗品を購入する。連続処理装置の作成を行う。
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