研究課題/領域番号 |
24780329
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
光野 秀文 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (60511855)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 昆虫 / 生体分子 / 匂いセンサ / イオンチャネル型受容体 / 流路チップ |
研究概要 |
アミン類や酸等の有害物質を検出する社会的ニーズが高まっているが、既存の匂いセンサでは、識別能、検出感度、検出速度に課題がある。昆虫は環境中の多様な匂い物質を化学感覚受容体を通して高感度かつリアルタイムに検出できる。昆虫の化学感覚受容体は嗅覚受容体とイオンチャネル型受容体(IR)に分類され、前者は主にアルコール類やエステル類、後者はアミン類や酸といった匂い物質を受容する。代表者らは嗅覚受容体を利用した高感度匂いセンサを開発したが、アミン類や酸を検出できる匂いセンサの開発には至っていない。本研究は、IRを利用したアミン類や酸を高感度に検出できる匂いセンサの開発を目的とする。平成24年度は、匂い検出素子構築の基盤技術の確立を目指し、①匂い検出素子の構築、②匂い検出素子の機能評価、③匂いセンサチップの構築を並行して実施した。 ①匂い検出素子の構築 キイロショウジョウバエ触角で発現する16種類のIR遺伝子を単離した。これらのうち匂い応答が明らかにされている2種類のIRについて、カルシウム感受性蛍光タンパク質(GCaMP3)とともにSf21細胞に遺伝子導入した。抗生物質を利用したスクリーニングを実施し、2種類のIRを安定に発現する細胞系統を樹立した。 ②匂い検出素子の機能評価 構築した2種類の細胞系統について、匂い物質に対する蛍光強度変化量の測定を試みた。現在、匂い物質や関連物質、各濃度に対する細胞系統の蛍光応答の測定を進めている。 ③匂いセンサチップの構築 ガラス製のマイクロ流路チップを設計・作製した。作製したチップ中にGFP発現細胞を導入し、1週間にわたり培養でき、蛍光観察できることを示した。また、CMOSイメージセンサを用いて蛍光ビーズを導入したチップから蛍光検出が可能であることを示した。これらにより、チップ中の細胞及び蛍光ビーズの蛍光を検出する基礎技術を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
キイロショウジョウバエのIRを発現させた細胞系統をアレイ化した匂いセンサチップを開発するための基礎技術の確立を目指して、平成24年度は①匂い検出素子の構築、②匂い検出素子の機能評価、③匂いセンサチップの構築を並行して実施した。①匂い検出素子の構築では、16種類のIR遺伝子を単離し、複数種類のIRを発現する細胞系統の樹立に成功した。しかし、②匂い検出素子の機能評価において、現在、樹立した細胞系統から匂い応答の測定を進めている段階であることから、本項目はやや遅れていると判断した。③匂いセンサチップの構築では、細胞系統を導入できるマイクロ流路チップの設計、チップ上での細胞の培養、及びCMOSイメージセンサを用いたチップ中の蛍光ビーズの蛍光測定まで達成しており、当初の計画通り進展している。以上を3つの項目を総合的に評価して、本研究の現在までの達成度を「(3)やや遅れている。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度の研究を発展・統合し、キイロショウジョウバエ生体の触角で機能するIRを発現させた細胞系統をマイクロ流路チップ上にアレイ化した匂いセンサチップの開発を目指す。特に平成24年度にやや遅れていると評価した②匂い検出素子の機能評価における細胞系統の応答特性の取得及び解析を重点的に進める。 具体的には、①匂い検出素子の構築では、キイロショウジョウバエ生体の触角で機能する16種類のIRを対象にしてIRを安定に発現する細胞系統を樹立する。②匂い検出素子の機能評価では、光学イメージングにより、樹立したすべての細胞系統についてリガンドとなる匂い物質や関連物質に対する応答特性及び濃度情報を取得する。まずは平成24年度に樹立した2種類の細胞系統について、光学イメージングを実施し、匂い応答特性や濃度応答情報を決定し、その後樹立できた細胞系統から逐次応答特性を取得する。そして、③匂いセンサチップの構築で、複数種類の細胞系統から蛍光測定を行うためのマイクロ流路チップを設計・作製する。また、CMOSイメージセンサを用いた細胞応答の計測にも注力し、最終的に複数ウェルからの蛍光を検出可能なサイズの撮像素子を持つCMOSイメージセンサをチップと組み合わせたセンサチップを構築する。以上の技術を統合し、複数のIR発現細胞系統を導入したセンサチップから、匂い刺激に対する応答をパターンとして可視化できる匂いセンサを完成させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に引き続き、培養細胞への遺伝子導入にかかる試薬類及び樹立した細胞系統の継代・維持にかかる培地類に研究費を使用する予定である。特に平成25年度では、16種類のIRを発現させた細胞系統からの応答特性の取得及び解析を重点的に実施するため、研究費の大半を光学イメージングに必要となる試薬類や器具類に使用する予定である。また、樹立した細胞系統をアレイ化できるマイクロ流路チップ及びCMOSイメージセンサを用いた細胞応答の検出系を新たに構築する予定である。本検出系の構築に必要となる部品類にも研究費を使用する予定である。なお、平成25年度で実施予定の研究についても所属研究室の設備で実施可能であるため、備品や設備を購入する予定はない。 また、平成25年度中に本研究成果を国際学会で発表する予定であるため、旅費・宿泊費としても使用する予定である。
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