熱ショック転写因子(Hsf)は真核生物全般に広く保存され、ストレス応答に重要である。シロイヌナズナには21ものホモログが存在し、構造の違いからクラスAからCの3クラスに分類されている。その中でもHsfA1dおよびHsfA1eがHsfを介したストレス応答のマスターレギュレーターであることが明らかになりつつある。本研究ではHsfA1d/A1eの活性化に関わるタンパク質の単離を目的として、昨年度までに酵母ツーハイブリッド法によりスクリーニングを行ったところ、いくつかのクローンを得る事ができた。本年度はその解析を行ったが、全て擬陽性であることが明らかとなった。このことは転写因子であるHsfA1d/A1eが酵母でも機能した結果によるものと推測した。そこで原核生物である大腸菌を用い、Bimolecular fluorescence complementation (BiFC) 法によるスクリーニングを行った。その結果、これまでに熱応答に関わる事が報告されているタンパク質をコードする遺伝子が単離された。またこのタンパク質をコードするクローンが複数単離された。 またこれまでにCa2+シグナリングが熱ショック応答に関わる事が報告されている。そこでHsfA1d/A1eの標的遺伝子であるHsfA2の熱応答へ及ぼす種々のCa2+シグナリング阻害剤の影響を解析したところ、HsfA2の応答は抑制された。またCa2+結合タンパク質であるカルモジュリン3(CaM3)が熱応答に関わることから、HsfA2の発現にも関与していると考え、CaM3遺伝子破壊株を単離し、その植物でのHsfA2の熱応答を解析した。その結果、HsfA2の熱応答は野生株と比較して抑制されていた。このことからCa2+シグナリングがHsfA1d/A1の活性化に関与している事が示唆された。
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