研究概要 |
プロキラルなアレンジインを用いたエナンチオ場選択的な不斉環化反応の開発を目指し研究を進めてきた。 すなわち、7-benzyloxy-2-methyl-7-(prop-1-yn-1-yl)deca-2,3-diene-8-yneを基質とし、キラル触媒の前駆体であるCp*RuCl(cod)錯体とビナフチル骨格を持つリン酸銀との反応で生じる、キラルホスフェートを持つカチオン性ルテニウム錯体との反応を種々検討した。しかしながら、本系においては環化反応そのものが進行しにくく、また得られた環化体はいずれもラセミ体であった。一方、種々のキラルアルコールを添加剤としてカチオン性錯体を調製し反応させたところ、メントールを用いた場合に中程度のエナンチオ選択性で目的の環化体が得られることが明らかとなった。今後も同様の戦略で不斉環化反応の開発研究を進める予定である。 一方代表者は最終年度において、キラルアニオン源としてイオン液体が利用可能かどうかを探るべく、イミダゾリウム塩を基盤とするイオン液体中での1,7-アレンインの[2+2]環化反応の検討を行った。すなわち、butylmethylimididzloiumをカチオンとして、種々の対アニオンを検討したところ、PF6を対アニオンとするイオン液体中にて環化反応が定量的に進行することが明らかとなった。また触媒リサイクルについても検討を行い、ルテニウム触媒を含むイオン液体が、最高10回のリサイクル能を有することも明らかにした。今後は、ホスフェート系キラルアニオンを持つイオン液体を調製し、不斉環化反応への適用へ向けさらなる検討を行う予定である。
|