研究課題/領域番号 |
24790003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
植田 浩史 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (50581279)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 酸化-骨格転位カスケード反応 / 多環性高次構造アルカロイド / ハプロファイチン / グリオクラジン C / 酸素 / グリーンケミストリー / Friedel-Craftsアルキル化 / インドール |
研究概要 |
平成24年度は、当グループで独自に開発した酸化-骨格転位カスケード反応を用い、高度に縮環した多環性高次構造アルカロイドhaplophytineの合成研究を行った。Haplophytineの収束的合成研究において、既に申請者は本カスケード反応をさらに発展させ、過酸物や金属酸化剤を用いない空気を酸化剤とする環境調和型の反応へと改良することに成功した。今年度は、本反応の最適化、および機構解明を行った。モデル化合物を用いた条件検討の結果、用いるチオールとして4-クロロチオフェノールが有効であることを見出した。さらに、反応点であるジアミノエテン部と共役する芳香環の電子密度も本反応の反応性に影響を与えることがわかった。すなわち、電子供与性の置換基を有する芳香環では酸化反応の加速化がみられ、電子求引性の置換基を有する芳香環では酸化反応の遅延がみられた。以上、モデル化合物により得られた知見を基に、本カスケード反応を9環性化合物に適応した結果、収率には改善の余地を残すが、haplophytineの収束的全合成を達成した。 上記の合成過程で、AgNTf2を用いた新規Friedel-Craftsアルキル化反応を見出した。そこで、本反応を鍵工程とするgliocladin Cの合成研究に着手した。Gliocladin類は、生物活性として白血病細胞に対し、強い細胞毒性を有することで興味がもたれている化合物群である。本化合物の合成上の課題として,ピロロインドール3a位のインドールを含む第四級不斉炭素中心の立体選択的構築が挙げられる。本手法では、銀塩を用いたハロゲンの活性化による極性転換を利用しており、これまで困難とされていたこの位置での芳香環の導入を可能とする。本手法により、課題である第四級不斉炭素を構築することで、gliocladin Cの効率的全合成を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の過酸物を用いた酸化-骨格転位カスケード反応から空気を酸化剤とする環境調和型の反応へと改良することに成功した。本反応条件の最適化により、従来の条件では全く進行しなかった多官能基を有する基質においても、望むカスケード反応の進行がみられた。その結果、最難関の合成化合物であるハプロファイチンの収束的全合成を達成した。さらに、独自に開発した銀塩を用いるFriedel-Craftsアルキル化を応用し、グリオクラジンCの全合成にも成功した。本合成は、総収率28%と非常に効率的な合成経路である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続きハプロファイチンの合成研究を継続するとともに、イソシゾガミン、ロイコノキシンの全合成に向けた研究を行う。まず、ハプロファイチンの合成研究おいては、本化合物の全合成を達成することができたが、鍵反応の収率を満足のいく結果で得られなかった。低収率に留まる要因として、基質中央部に電子豊富な芳香環の存在が挙げられることから、まず芳香環の電子密度を制御することで収率の改善を行う。イソシゾガミンについては、本年度までに本化合物を形成する6環全ての環構築に成功している。次年度では、種々の官能基変換により、まずラセミ全合成を達成する。その後、Stoltz教授によって開発された不斉Tsujiアリル化反応を用い、不斉第4級炭素中心を構築し、イソシゾガミンの不斉合成を達成する。また、現段階での合成経路では、各環形成を段階的に行っていることから、合成の効率性に課題が挙げられる。そこで、Mannich反応を用いたワンポットでの連続環化反応を開発することで、さらなる効率的な合成経路の確立を行う。ロイコノキシンにおいては、これまでに得られた知見を基に、今年度内でのラセミ全合成を達成する。 上述した単位反応の開発および生理活性天然物の全合成への展開について得られた結果を取りまとめ、論文ならびに国内外での学会発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に予定していた酸素の同位体を用いた本酸化カスケード反応の機構解明に関する研究を25年度に変更することで生じた未使用金額を、平成25年度請求額に合わせ、25年度の研究遂行に使用する予定である。
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