本年度は、独自に開発した酸化反応を用い、高度に縮環した多環性高次構造アルカロイドisoschizogamineやleuconoxineの合成研究を行った。また、昨年度確立したgliocladin Cの合成経路を基に、生物活性として白血病細胞に対して強い細胞毒性を有するT988類の合成研究も行った。 Isoschizogamineの合成研究において、クロム酸化によりアミド隣接位での位置選択的なC-H酸化が進行することを見出し、新規アミナール構築法を確立した。また、比較的誘導容易な鎖状基質からのカスケード型連続環化反応により、キノリン骨格を含む4環をわずか8工程で合成することに成功した。その後、確立したアミド隣接位での位置選択的なC-H酸化を起点とした残る2環の構築を経て、ラセミ全合成を達成した。 Leuconoxineの合成研究において、段階的なインドール酸化-環化反応により新規ピロロインドール骨格の構築法を開発した。すなわち、インドールの酸化と続くシリルイミデート中間体を経た環化反応により、4置換アミナール炭素や第4級不斉炭素中心を含むピロロインドール骨格の構築に成功した。また、その後の閉環メタセシス反応により4つの環が窓上に縮環した[5.5.6.6]diazafenestrane骨格を構築し、leuconoxineの全合成を達成した。さらに、確立した本合成経路を基に、類縁化合物であるleuconodine Bおよびmelodinine Eの網羅的全合成も達成した。 T988類の合成研究においては、昨年度確立したgliocladin Cの合成経路を基に、本化合物の主骨格をなすピロロインドール環の構築を行った。その後、ジケトピペラジン環上の構造修飾ならび架橋したジスルフィド部の導入を経て、T988BならびにT988Cの不斉全合成を達成した。
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