研究課題/領域番号 |
24790004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 洋太郎 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (90420041)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 芳香族求核置換反応 / SNAr / 位置選択性 / Meisenheimer 型中間体 / マイゼンハイマー型中間体 / 量子化学計算 / 反応機構解析 / 遷移構造 |
研究概要 |
SNAr(芳香族求核置換反応)の反応機構ならびに選択性発現の要因を解明するために、まず高精度量子化学計算を用いて反応中間体である Meisenheimer 型中間体の詳細な検証を行った。これまでに存在が確認されている Meisenheimer 型中間体や、SNAr で想定される様々な Meisenheimer 型中間体の構造最適化を行い、その安定性と存在の有無を検証した。Meisenheimer 型中間体の理論計算を用いた先行研究では、計算レベルが低かったことの他に、 Meisenheimer 型中間体のカウンターカチオンが考慮されていなかったことが問題点として挙げられる。筆者はこれらの問題を解決するため、種々の計算レベルでの比較と、カウンターカチオンを考慮することで、高い精度で Meisenheimer 型中間体の構造を解析した。その結果、高度に安定化された構造でしか Meisenheimer 型中間体が存在しえないことが明らかとなってきた。一方、これまでに X 線結晶構造や NMR などの分光学的手法で確認されている Meisenheimer 型中間体については、理論計算によっても構造が収束し、事実と一致した。以上の結果から、SNArの反応機構ならびに選択性発現の理解には、中間体ではなく、遷移構造および反応機構の解析が必要であると結論した。そこで現在、カウンター金属を含めたSNAr 反応モデルを用い、高精度量子化学計算を用いた詳細な反応経路解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画である、Meisenheimer 型中間体の詳細な検証は達成していると考えている。また、もう一つの計画である SNAr の反応機構解析については25年度に引き続き行う計画であるが、これについては現在進行中であり、いくつかの知見が得られてきていることから、今回の自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、カウンター金属を含めたSNAr 反応モデルを用い、高精度量子化学計算を用いた詳細な反応経路解析を行うことで SNAr の機構解明を目指す。π電子欠如系芳香環の SNAr に関する理論的なアプローチは、半経験的手法 ( MNDO 法) を用いた検討がわずかになされているが、カウンターカチオン(位置および効果)を考慮しないモデルであることや、計算レベルの点で問題があり、反応機構や選択性を決定する要因を解明するに至らず、未だ十分な検討はなされていない。この問題を解決するため、計算モデルにおいて溶媒分子を追加する、反応試薬の会合度を考慮する、誘電率パラメータを加味する等を行なっていく予定である。必要に応じて計算モデルの修正、および計算方法・基底関数の検討を行う。以上を遂行し、前年度の結果と併せて整理し、理論的一般化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用計画として、反応実験のための有機試薬(主に反応基質)、無機試薬(酸、塩基、触媒等)、有機溶媒(脱水溶媒、分析用溶媒を含む)、分離用シリカゲルおよび薄層クロマトグラフィー、ガラス器具(すり付きフラスコ、エルレンマイヤー、カラム、NMRチューブ等)、論文投稿に関する諸経費(論文校閲、投稿料、別刷)、学会にて調査および成果発表を行うための旅費などを計画している。
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