π電子欠如系芳香環上での芳香族求核置換反応 (SNAr) について詳細な反応機構や選択性を合理的に説明するため、高精度量子化学計算を用いて反応経路の解析、マイゼンハイマー型中間体ならびに反応遷移状態の解析を行った。これまでマイゼンハイマー型中間体は SNAr 反応の重要な中間体として考えられてきたが、今回の検討によって中間体として存在しないことが判明した。従って、本中間体の安定性が位置選択性を決定するという古典的な解釈は否定される。そこで、SNAr の反応経路解析を行ったところ、遷移構造において対カチオンの存在が重要であること、活性化エネルギーの比較によって選択性が予測しうることを示唆した。
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