研究概要 |
屋久新曽根産海綿より単離・構造決定された新規ペプチド系天然物ヤクアミドAおよびBは、4つのα,β不飽和アミノ酸を含む多数の非タンパク質構成アミノ酸からなる特徴的な構造を有する。ともにマウス白血病細胞P388に対し非常に強力な細胞増殖阻害活性を示し、また、ヤクアミドAはヒト癌細胞株39系に対して他の抗がん剤と比較し特異な増殖阻害活性を有することが報告されている。そのためヤクアミドの構造-活性相関研究は新規抗がん剤の設計・合成につながると考えられ、本研究ではその全合成および構造活性相関研究を行うことを計画していた。 本年は前年度までに確立した銅触媒を用いる不飽和アミノ酸部位のE/Z選択的合成法を鍵反応として、ヤクアミドAの全合成に引き続きヤクアミドBの全合成研究を行った。ヤクアミドBの提唱構造の合成に成功しており、現在その詳細を解析中である。また不飽和アミノ酸部位合成の高効率化研究に取り組み、Staudingerライゲーションを用いる不飽和アミノ酸部位合成法を開発した。本法を用い、カプサイシン受容体の長期的アンタゴニスト活性を有し、ヤクアミド同様その構造中に不飽和アミノ酸を含むペプチド系天然物ノビラミドBの全合成に成功した。本法はペプチド固相合成法にも適用可能であり、ノビラミドB天然類縁体である環状デプシペプチド天然物ノビラミドDの全合成も達成した。今後本法を用いてヤクアミド類合成の更なる効率化が可能となると期待される。 期間全体を通し、本研究ではヤクアミド類の化学合成を目指して不飽和アミノ酸含有ペプチドの効率的合成法の開発を行った。銅触媒を用いる不飽和アミノ酸部位のE/Z選択的合成法を開発し、ヤクアミドAの世界初の全合成を達成した。またペプチド固相合成法にも適用可能であるStaudingerライゲーションを用いる不飽和アミノ酸合成法の開発も行った。
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