光感受性物質を介して発生する一重項酸素が光線力学的療法において腫瘍組織の死滅に最も重要な役割を担っている事が示唆されている。しかし、一重項酸素を直接定量する手段は少なく、そのメカニズムは不明である。本研究では光線力学的療法において発生する一重項酸素およびその他の活性酸素種を、各活性種に対するスピントラッピング剤をそれぞれ用いて、ESRスピントラッピング法により光感受性物質の一つであるプロトポルフィリンIX(PpIX)を光り照射して発生する一重項酸素およびその他の活性酸素種の同定と定量を尾こなす。さらにガン細胞を用いた各活性種の定量を行い、光照射で発生するフリーラジカルの影響を勘案してガン細胞死滅のメカニズムの解明に迫る事を目的としている。 平成26年度は、ヘム生合成過程で生成されるPpIXの前駆体である5-アミノレブリン酸(ALA)で培養した細胞を用いて内因性PpIXを細胞に蓄積させ、光照射時に生成する活性酸素の定量を行うことで、光照射が細胞に対して及ぼす影響について検討を行った。その結果、ALA共存下で培養した細胞に外部からスピントラップ剤を添加して光照射を行うことで、細胞周辺に生成する活性酸素種を測定すると、ガン細胞および正常細胞いずれにおいてもヒドロキシラジカル由来のスピンアダクト(DMPO-OH)を観測したものの、一重項酸素由来のスピンアダクトは観測されなかった。また、生成したDMPO-OH濃度はガン細胞の方が正常細胞より有意に高かった。以上よりALA共存下での細胞培養が細胞の性質を変化させ、正常細胞よりガン細胞の方がより顕著である事が示唆された。
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