研究課題/領域番号 |
24790007
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
杉本 健士 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (60400264)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ピロロインドリジン / イミノエステル / アゾメチンイリド / [3+2]付加環化反応 / 金触媒 |
研究概要 |
本計画の初年度となる本年度は、金触媒を用いた連続的環化反応によるピロロインドリジン合成法の確立を目指し検討を行った。簡便に調製可能な原料を用いて、目的とする連続環化反応に最適な触媒およびその他の条件について精査したところ、CyJohnPhosAuCl/AgOTfを用いてジクロロエタン中80℃にて加熱すると、金触媒による三重結合の活性化、イミン窒素からの6-exo-dig型環化、アゾメチンイリドの発生は首尾よく進行し、目的のピロロインドリジン骨格の構築には至らなかったものの、インドリジンをほぼ定量的に単一の成績体として与えることが分かった。二次元NMRによって成績体の立体化学を推定し、親双極子剤はアゾメチンイリドに対してendo付加していると推測した。この段階までに、ピロロインドリジン骨格の立体的要素は確定することから、立体制御下に本法を進行させる方法を確立することとした。検討の結果、不斉補助基として8-フェニルメンチル基を導入したグリシンエステルを用いて光学活性イミンを合成し、これに対して本法を適用すると、不斉補助基による不斉誘起は完全な立体制御下で進行することが判明し、単一の光学異性体を高収率で与えた。結晶化誘導体へと導いた後に単結晶を作成し、X線結晶構造解析によってその絶対立体化学を確定させることで、立体選択性の発現機構を明らかとすることが出来た。 さらに、ピロロインドリジン骨格形成には、成績体のエナミン部からエステル部への環化が必須であることから、先の分子内反応でその妨げとなっているエナミン部の異性化を排除する検討が必要であると判断し、分子間反応による三成分連結型連続反応を試みた。その結果、若干の条件の修正により先と同様の反応が進行することが分かったが、やはりエナミン部からエステル部への環化は困難であることが判明した。 これらの経緯は、各種学会で発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの計画に挙げていた金触媒による連続反応の開拓は、完全には達成されていないが、目標であるピロロインドリジン骨格の立体選択的構築とミルミカリンアルカロイド合成に繋がる重要な知見を得ることに成功しており、おおむね順調に進展していると考えている。即ち、ピロロインドリジンの立体選択的構築には、直接的な前駆体であるインドリジン骨格の高立体選択的構築が必須であるが、これには不斉補助基の使用が適していることを発見し、高収率、高立体選択的に目的とするインドリジン骨格ひいてはピロロインドリジンを得る筋道はできているためである。また、簡便に調製可能な原料を用いて検討を進めたために、中間体のエナミンの異性化が目的としたピロロインドリジン骨格の形成を妨げているとも考えられたが、この異性化を排除できる反応系を考案し、実際に検討することで、真の原因がエレクトロフィルとしてのエステル部位の活性の不足であることを見いだすことが出来ている。研究の推進方策を考える重要なヒントを得ることが出来ているためである。
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今後の研究の推進方策 |
単核性ミルミカリンの効率的不斉全合成を達成し、大学院生一名の協力のもと、本法の有用性を実証する。まず、直鎖状アルキルアルデヒド由来のイミノエステルを基質とした検討を行い、ピロロインドリジン前駆体を与えうるexo型エナミンからの環化を進行させ得る条件の探索を行う。現時点では、電子不足なエステルとしてフェノールエステル、ペンタフルオロフェノールエステルや、トリクロロエチルエステル、トリフルオロエチルエステルなど電子求引性の置換基を有するエステルや金触媒によって活性化されて脱離基を発生させうるヘキシノールエステルを用いる計画である。これを不斉補助基の設計に反映させて、光学活性インドリジンを構築、さらにエナミン部位からの環化により三環性エナミドを得る。これにプロピルリチウムを作用させた後、酸性条件に付し、得られる第三級アルコールのプロトン化ー芳香族化を進行させ、ミルミカリン217の簡便合成を達成する。またプロピルリチウムに替わってプロペニル求核剤を作用させることでミルミカリン215A及びBの合成を達成し、単核性ミルミカリン類の立体選択的合成に適用可能であることを実証する。また、本手法を活用して二核性ミルミカリンアルカロイドの集約的合成法の確立へと展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画は順調に進んでいるが、わずかながら165円の残予算が発生した。本年はこれを合わせて、有機試薬や無機試薬、有機溶媒、硝子器具等の消耗品費に1100千円を充当し、最適反応条件の精査および全合成研究を遂行する。また、本研究の成果を発表するため、国内および国際学会への参加を計画しており、国内旅費として100千円、国外旅費250千円を計上した。また本研究の成果を論文として投稿する際に必要な英語論文校閲費用として50千円を使用する予定である。また論文作成や、研究進捗状況報告会資料作成、および論文投稿料として計100千円をその他の費用として計上した。
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