研究課題/領域番号 |
24790014
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
村松 渉 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60578714)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 糖官能基化 |
研究概要 |
位置選択的に官能基化された糖類は、多糖類の合成や配糖体天然物の全合成、コンビナトリアルライブラリー構築に必須の中間体で、通常数工程の保護-脱保護操作を経て合成される。一方で、これら操作は合成を行う上で本来不必要な操作である。そこで、無保護糖類が有する複数の水酸基の中、特定の水酸基のみを直接かつ位置選択的に官能基化することができれば、合成過程で生じる様々なコストの削減(時間、試薬、エネルギーなど)につながるばかりでなく、安全性や環境への負荷に対する問題も解決できるものと期待される。そこで研究代表者は、光延反応を利用する触媒的位置選択的官能基化に関する研究を実施した。 初めに、methyl α-D-glucopyranosideを基質として用い、求核剤としてp-NsNH2、光延試薬としてDEAIを用い、触媒としてBu2SnCl2を10 mol%添加したところ、6位一級水酸基が僅かにアミノ化された。また、塩基としてPEMPを添加した場合においても収率が30%前後まで上昇したものの、目的の2位水酸基を立体反転を伴ってアミノ化することはできなかった。そこで、求核剤のかさ高さが位置選択性の原因と考え、NaN3などの小さな求核剤を用いて実施したが、2位水酸基をアミノ化することはできなかった。以上の結果から、本経路同様にSN2反応を経由する新たな検討として、良好な脱離基であるスルホニル基を触媒的に無保護糖の2位水酸基へ導入した後、アジドやチオールによる求核置換反応を行うこととした。 求電子剤としてTsClを用いた場合においては反応が十分に進行しなかったが、トリフルオロメチル基などの電子求引基を有する求電子剤を用いた場合においてはいずれの糖においても高収率、高位置選択性で反応が進行した。今後、アジドやチオ―ルによる官能基変換を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光延試薬を用いたSN2反応を経由する糖類の位置選択的官能基化は、その中間体の反応性が予想以上に低く、目的の2級水酸基にアジドまたはチオールを導入することはできなかった。これは、光延試薬およびリン試薬から発生する中間体がかさ高い点、通常の光延反応に使用する溶媒が有機すず触媒を使用する申請者の反応系に適さなかった点、さらに本来光延反応に不必要な塩基を申請者の有機すず触媒反応では添加する必要があるため、触媒反応を経由しない非触媒的な副反応が糖の6位1級水酸基で進行してしまった点に起因する。そこで、SN2反応を経由する別ルートとして優れた脱離基であるスルホニル基を触媒的に導入した後、アジドやチオールによる求核置換反応を行うこととした。その結果、現在までに様々な糖類に対し、触媒的かつ位置選択的にスルホニル基を導入することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、官能基変換可能なスルホニル基を触媒的かつ位置選択的に無保護糖へ導入することに成功している。そこで、今後はアミンやチオールを用いて求核置換反応を行い、アミノ糖やチオ糖の合成へ向けて検討を行う。その後、これらをワンポット反応で行えるように調整する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究に必要な試薬や溶媒、器具等の購入に1,000,000円前後を予定している。また、申請者の成果を広く世界に認知してもらうため、国内、海外への出張旅費として600,000円前後を予定している。さらに、論文校正費として100,000円前後を予定している。
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