研究課題/領域番号 |
24790014
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
村松 渉 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60578714)
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キーワード | 糖官能基化 |
研究概要 |
アミノ糖やチオ糖などの擬似糖類は生物学的現象を解明する上で重要な化合物であり、これまでに広く用いられてきた。一方で、糖類は複数の水酸基を有しているため、これらを合成するには保護ー脱保護といった多段階合成を必要としてきた。そこで研究代表者は分子認識触媒として有機ずず触媒を用いる無保護糖の位置選択的官能基化に挑戦した。昨年度、光延反応による官能基導入法の開発を行ったが、期待に反し良好な結果を得ることはできなかった。そこで、一旦位置選択的にスルホニル基を導入した後、アジド化合物などによる置換反応を行うこととし、その第一段階である糖類の位置選択的スルホニル化法の開発を行った。その結果、現在までに16種の単糖に対し15種のスルホニル基を位置選択的に導入することに成功した。また、本触媒反応を7つのフリー水酸基を有する二糖に対して適用したところ、99%の収率で目的のスルホニル糖を得ることに成功した。続いて、いくつかのアジド化合物を用いて置換反応を試みた。通常、アジド化合物を用いる置換反応は極性溶媒中で行われる。そこで、DMFやDMSOなどのいくつかの極性溶媒を用いて置換反応を試みたところ、室温では全く反応が進行しなかった。徐々に反応温度を上げるとスルホニル基の脱離が観察された。同様にシアノ化合物を含むいくつかの試薬を用いた置換反応を試みたが、いずれも良好な結果を与えなかった。そこで、スルホニル糖の有するフリー水酸基を保護基で保護した後、置換反応を試みたところ、置換反応の進行が観察された。これら結果から、位置選択的スルホニル化によって得られたスルホニル糖を直接用いると隣接する水酸基が作用してスルホニル基の脱離が進行したと予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光延試薬を用いた糖類の位置選択的官能基化は、その中間体の反応性が予想以上に低く、位置選択的なC-N, C-S, C-C結合を形成することはできなかった。そこで、SN2反応を経由する別ルートとして一旦スルホニル基を位置選択的に導入した後、求核置換反応を行うこととした。その結果、現在までに16種の単糖に対し15種のスルホニル基を位置選択的に導入することに成功した。また、本触媒反応を7つのフリー水酸基を有する二糖に対して適用したところ、99%の収率で目的のスルホニル糖を得ることに成功した。一方で、位置選択的スルホニル化で得られたスルホニル糖に対する直接的な求核置換反応は未だ成功していない。
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今後の研究の推進方策 |
位置選択的スルホニル化で得られたスルホニル糖に対する直接的な求核置換反応が成功しなかった理由として、導入したスルホニル基とトランスの関係にある隣接する水酸基の影響が考えられる。そこで、スルホニル基とシスの関係にある水酸基を有するスルホニル糖を用いて置換反応を検討する。さらに、合成したスルホニル糖の有するフリー水酸基を一旦保護基で保護し、置換反応による位置選択的C-N, C-S, C-C結合形成を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24-25年度に光延反応条件を利用して糖の位置選択的な官能基化を行い、学会および論文にて報告する予定であったが、当初予定していた光延反応条件が良好な結果を与えなかった。そのため、同様に立体反転を伴って官能基を導入できる手法、すなわち、一旦位置選択的にスルホニル基を導入した後、求核置換反応を行う手法へと計画を変更したため、未使用額が生じた。そのため、平成26年度への延長申請を行った。 生じた未使用額は平成26年度の物品費および旅費に全額を充てる。
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