研究課題/領域番号 |
24790020
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
嶋田 修之 北里大学, 薬学部, 助教 (00455601)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ホウ素 / ボロン酸 / ペプチド / ペプチド合成 / 脱水縮合 / アミド化 / 触媒 / 触媒反応 |
研究概要 |
ペプチド・タンパク質の修飾により得られる分子は、医薬品のリード化合物や生命現象解明のための分子プローブ、人工酵素や人工抗体、人工チャネルやバイオセンサーなどの高次機能性分子ツールとしての潜在性を秘めている。これら分子ツール創製の技術的基盤となるのがペプチド化学合成である。これまでに実績のあるペプチド化学合成法は、固相合成法とネイティブケミカルライゲーション(NCL)法であるが、固相合成法では適用可能なペプチド鎖はアミノ酸50残基程度が限界であり、それ以上の長鎖ペプチドの合成には困難が伴う。また、ネイティブケミカルライゲーション法には、C末端側ペプチドフラグメントとしてペプチドチオエステルをあらかじめ調製しておく必要がある点や縮合部位のペプチドフラグメントのN末端がシステイン残基に限定されるという課題が残る。そこで本研究において、従来法を凌駕した触媒的ペプチド化学合成法の開発を目指した。 研究初年度は、触媒候補分子として同一分子内にスルファニル基を組み込んだ有機ボロン酸化合物を設計し、その合成について検討を行った。その結果、チオフェノールの直接的オルトリチオ化、2-(ブロモメチル)フェニルボロン酸誘導体のS-アルキル化ならびにO-アルキル化を利用することにより、リンカー長の異なる5種類の分子を合成することができた。現在、合成した分子の触媒活性ついて詳細に検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々は初年度において、触媒反応のデザインならびに触媒分子の設計を行い、同一分子内にボロン酸部位とスルファニル基を有する触媒分子の合成を検討した。これまでに同一分子内にスルファニル基を組み込んだボロン酸誘導体の合成に関する報告例は少なく、その実用的な合成法の確立が課題として残されていた。これに対して我々は、独自に開発した①オルト位リチオ化を経る直接的ホウ素導入法②ベンジル位のS-アルキル化③ベンジル位のO-アルキル化の3種の合成手法を適用することにより、これまでにリンカー長の異なる5種の触媒分子の合成の合成に成功した。さらに、現在のところ予備的知見の段階ではあるものの、独自に設計・合成した分子が単純カルボン酸と単純アミンとのアミド化反応において触媒として機能することを明らかにすることができた。当初の計画に比べ触媒候補分子の合成法確立に時間を要したが、触媒設計の鍵となる重要な知見を得ることができた。今後は触媒構造と触媒活性の相関研究を推進しさらなる高活性アミド化触媒の開発を目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究により触媒設計の鍵となる重要な知見を得ることができたので、今後は触媒構造と触媒活性の相関研究を推進しさらなる高活性アミド化触媒の開発を目指す。このためには、まず広範な触媒ライブラリーの構築が必要となる。また、現在のところアミド化反応の促進には加熱条件が必要となっており、より低温下反応を促進する触媒分子の創出が求められる。将来的には各種ペプチド誘導体を基質として用い、従来法を凌駕した新規ペプ チド化学合成反応の開発を目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は基本的に現有設備で遂行可能である。初年度に引き続き、研究費の大半は、触媒分子合成のために必要な消耗品(試薬、溶媒、シリカゲルクロマトグラフィー、ガラス器具等)ならびに触媒活性評価に必要なカルボン酸、アミン、アミノ酸類等の試薬購入費に充てる。 消耗品費は、研究計画に記載した実験の遂行に必要不可欠な試薬類および分離精製用シリカゲル(700千円)、各種溶媒(400千円)、実験用ガラス器具(300千円)の購入に充てる。旅費は、学会等の研究発表(国内 300千円)への参加費用ならび に航空運賃、滞在期間中の宿泊費に充てる。その他に関しては、スペクトルの依頼測定量(NMR、 質量分析および元素分析)として 200千円、英文校閲料とし100千円計上した。
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