ペプチド・タンパク質の修飾により得られる分子は、医薬品のリード化合物や生命現象解明のための分子プローブ、人工酵素や人工抗体、人工チャネルやバイオセンサーなどの高次機能性分子ツールとしての潜在性を秘めている。これら分子ツール創製の技術的基盤となるのがペプチド化学合成である。これまでに実績のあるペプチド化学合成法は、固相合成法とネイティブケミカルライゲーション(NCL)法であるが、固相合成法では適用可能なペプチド鎖はアミノ酸50残基程度が限界であり、それ以上の長鎖ペプチドの合成には困難が伴う。また、ネイティブケミカルライゲーション法には、C末端側ペプチドフラグメントとしてペプチドチオエステルをあらかじめ調製しておく必要がある点や縮合部位のペプチドフラグメントのN末端がシステイン残基に限定されるという課題が残る。そこで本研究において、従来法を凌駕した触媒的ペプチド化学合成法の開発を目指し、ペプチド合成にも適用可能なアミド化反応の開発を目的とした。 本年度は、昨年度に引き続き触媒候補分子である同一分子内にするスルファニル基を組み込んだ有機ボロン酸の合成について検討を行った。その結果、リンカー長の異なる6種類の分子を合成することができた。また、合成したボロン酸の触媒活性を検証すべく、単純カルボン酸と単純アミンとのアミド化反応に適用した。その結果、スルファニル側鎖がアミド化に及ぼす影響を明らかにすることができた。
|