研究課題
「目的」ルミナミシン(1)は北里研究所の大村らによって、抗嫌気性菌活性を示す新規天然物として見出された。標的のClostridium difficileは抗生物質による治療で腸の常在菌のバランスが崩れた際に異常増殖し、偽膜性大腸炎などを引き起こすため、危険な菌として警戒されている。現在これらの対処法として塩酸バンコマイシンが用いられるが、耐性菌出現などの問題からそれに代わる新たな抗嫌気性菌薬の開発が期待されている。1は、C. difficileに対して選択的な活性を示すため、その有機合成を用いた全合成と構造活性相関解明は、その創薬展開の大きなドライビングフォースになると期待できる。「成果」1の効率的かつ誘導化が可能になる全合成経路を達成するために、大環状エノールエーテルマクロライドと三環性酸素結束シスデカリンに分割し、収束的に中央部の10員環を構築する経路を考案した。大環状エノールエーテルマクロライドの合成は既に完了しており、本年度は、三環性酸素結束シスデカリン部分の合成に取り組んだ。アクロレインを出発原料とし、必要な官能基を揃えた三環性の分子を構築後、過酸化物により三環性酸素結束シスデカリン骨格の構築に成功した。しかしながら、その後の検討で、三環性酸素結束シスデカリン骨格に対して側鎖導入が困難であることが判明した。その問題を解決するために、合成経路の変更を行った。即ち、三環性酸素結束シスデカリン骨格を構築する前に、必要となる側鎖をStilleカップリングによって導入し、その後1,6-オキサマイケル反応を行うことで、側鎖を有した三環性酸素結束シスデカリン骨格を合成した。その後、種々変換を行い、必要な炭素骨格を揃えた酸素結束シスデカリン部分の構築に成功した。現在までに、1の必要な官能基を揃えた酸素結束シスデカリン骨格を構築した報告例は無く、本研究によって1の全合成、構造活性相関研究、創薬展開が期待できる。
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