研究課題/領域番号 |
24790023
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
山本 大介 北里大学, 薬学部, 助教 (10509970)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機分子触媒 / 有機ホウ素化合物 / 気体分子 / 水素化反応 |
研究概要 |
本研究はホウ素原子からなる有機分子を創製し、気体を自在に活性化できる方法論の開発を目的とするものである。文献上の調査や申請者らが行った研究によって、トリアリールホウ素は空気や水に不安定であり、容易にホウ素-炭素結合が開裂する傾向をもつことが明らかとなった。すなわち、より複雑な構造を有す有機ホウ素化合物を合成する上でトリアリールホウ素を安定化させる要因を触媒構造に取り込む必要性があると判断した。そこで、種々検討を重ねたところ、トリアリールホウ素周辺にsp2性の非共有電子対を有す窒素原子または酸素原子を存在させることによって、有機ホウ素化合物の安定性が著しく向上するということが強く示唆された。窒素原子とホウ素原子の空間的な位置関係については様々なものが考えられるが、研究の端緒としてarylpyridineを基本骨格とし、ホウ素の導入法を確立するとともに、その化合物の安定性について検討を行うこととした。arylpyridine の合成に関しては、ブロモピリジンとアリールホウ素化合物の鈴木―宮浦クロスカップリング反応による方法に基づいた。合成した種々のarylpyridineにBBr3を用いたフリーデルクラフツ型反応を行うことによって、位置選択的にホウ素原子を導入し、続けて、C6F5Liを適用することにより、ペンタフルオロフェニル基を導入できる反応条件を確立した。以上のようにして、得られたトリアリールホウ素は、予想通りに水や空気に対して安定であり新規トリアリールホウ素化合物を合成することができた。現在、これらの化合物による気体分子の活性化並びにイミンの水素化反応の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、著者は工程数を多く必要としない比較的簡便に合成可能と考えられるトリアリールホウ素の合成を試みた。しかしながら、いずれも有機ホウ素部分が空気や水に不安定であり、容易にホウ素-炭素結合が開裂する傾向をもつことが明らかとなった。したがって触媒合成のための反応条件や後処理、精製法に関する実験操作が極めて困難であることがわかった。すなわち、本研究を通して行ってきた検討結果によって、触媒の適度な化学的安定性や取扱いを考慮する必要性があると判断することができ、より複雑な構造を有す有機ホウ素化合物を合成する上で、トリアリールホウ素を安定化させる要因を触媒構造に取り込む必要があるという知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績に示したように、トリアリールホウ素周辺にsp2性の非共有電子対を有する窒素原子または酸素原子を存在させることによって、安定な新規トリアリールホウ素化合物を創製できた。そこで、申請者が開発した合成経路に基づき、種々の有機ホウ素化合物を合成していく。さらに、ヘテロ原子とホウ素原子の空間的な位置関係については様々なものが考えられることから、現時点で考案している基本骨格arylpyridineから炭素鎖を変化させ、剛直な触媒構造から分子の柔軟性を向上させることを志向している。さらに、創製した有機ホウ素分子を用い、水素分子を活性化できる反応条件を検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本申請課題を行うにあたって購入を考えている機器は、全て一般的な有機化学実験に必要な備品であり、研究を遂行するにあたって必要不可欠なものである。また、反応開発に必要な試薬、精製に必要なシリカゲルなど消耗品も必要不可欠なものである。 ULVAC油回真空ポンプ GCD-136X 25万円 設置機関(北里大学) 各種反応試剤 40万円、シリカゲル 10万円、シリカゲルプレート 10万円、各種有機溶媒 30万円、ガラス器具 20万円、ガスタイトシリンジ 15万円 旅費:成果発表(薬学会、天然有機化合物討論会)20万円
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