研究概要 |
複素環骨格は医・農薬などの有用物質に広く分布する重要な基本骨格である。しかし、従前の複素環合成法の多くは過酷な条件や多段階の合成反応、化学量論量以上の活性化剤などを必要とすることから、入手容易な原料からの新規かつ効率的な複素環骨格構築法の開発は現在も望まれている。アルキン化合物は遷移金属触媒や超原子価ヨウ素試薬などによって容易に活性化が可能であることから、申請者は金属触媒系や超原子価ヨウ素試薬が1つのフラスコ内で複数の反応を連続的に活性化するカスケード型合成法の開発を行なってきている。今年度は下記に示すカスケード型合成法について検討した。 1. アルキン類とニトリル化合物との酸化的カップリング反応によるオキサゾール合成: ヨードソベンゼンとトリフルオロメタンスルホン酸(あるいはトリフリルイミド)より調整される三価ヨウ素試薬を用いることにより、種々のアルキンとニトリルから1段階で2,4-二置換あるいは2,4,5-三置換オキサゾールが収率よく得られることを見出し、本合成法を利用した非ステロイド系抗炎症薬の新規合成法の開発に成功した。また、本反応の中間体を単離し、オキサゾール生成機構を明らかにした。さらに、本ヨウ素試薬をカルボニル化合物とニトリルからのオキサゾール合成法にも適応し、上記と置換基様式の異なるオキサゾールが得られることを明らかにした。 2. o-アルキニルベンジルアルコール誘導体からの多環性エーテル化合物の合成: 金(I)触媒存在下、MOM基によって保護されたo-アルキニルベンジルアルコール誘導体と3,5-ジメトキシフェノ-ルとの反応を行うと、四環性のイソクロマノ[3,4-b]クロマン誘導体が収率よく得られることが明らかとなった。今後、フェノール類をはじめとする種々の求核種との反応について精査し、本反応の一般性を明らかするとともに、本生成物の生成機構の解析を行う予定である。
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