研究課題/領域番号 |
24790026
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
日下部 太一 東邦大学, 薬学部, 助教 (00600032)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パラジウム触媒 / フラノン / カルボニル化 |
研究概要 |
本年度はまず、(±)-グレガチンBを初期合成ターゲットに設定し、ラセミ合成ルートの検討を行った。すなわち、1,1-ジエチニルアセテートを用いて、当研究室で開発した鍵反応(二価パラジウム触媒下プロパルギルアセテートの環化-カルボニル化反応成績体を経る5-Alkyl-4-methoxycarbonyl-3(2H)-furanoneの合成)を利用して、グレガチン類の骨格である3(2H)-フラノンを合成した。3(2H)-フラノンの末端アルキンに対するヒドロスタニル化と、続くヨウ素処理で右半分に相当するヨードアルケンを合成した。次に、文献既知の1-ブチンに対するヒドロホウ素化で左半分のパーツであるアルケニルボレートを調製した後、ヨードアルケンと鈴木‐宮浦カップリングを行い、(±)-グレガチンBの全合成を達成するとともに系統的な合成ルートを確立できた。 次に鍵反応の不斉触媒化を検討した。具体的には、1,1-ジエチニルアセテートを基質とした二価パラジウム触媒下のカルボニル化反応において、キラル配位子のスクリーニングを行い、エナンチオ選択性が発現するかを調べた。配位子としてはピンサー型ビスオキサゾリン、ビスイミダゾリン、およびPyboxのような三座配位子、BINAP、DuPhos、PHOX、QuinoxP* ligand、DIPAMP、MOPのようなリン配位子を検討した。光学純度は、キラルカラムを用いたHPLC分析を行い決定した。検討の結果、配位子としてPHOXを用いた場合に最高55% eeの成績体が得られることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.当研究室で開発した鍵反応を利用して(±)-グレガチンBの全合成を達成するとともに系統的な合成ルートを確立できたため。 2.キラル配位子のスクリーニングを行った結果、中程度ではあるがエナンチオ選択性が発現した。この知見をもとに、さらに条件検討を行うことで不斉収率の向上が期待できるため。 3.もし、来年度の検討で不斉触媒化を達成できなかったとしても、光学活性な2-メチル-3-ブチン-1,2-ジオールからプロパルギルアセテートへ変換後、鍵反応を用いて光学活性な3(2H)-フラノンを合成し、1で確立した合成ルートでキラル全合成が達成できると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
1.鍵反応の不斉触媒化 (1) 平成24年度の結果から、比較的良好な結果を与えたキラル配位子をもとに、さらなる配位子の検討および反応条件の最適化を行う。(2) 反応条件の最適化を終えた後、1,1-ジエチニルアセテートの基質一般性を検討をする。 2.グレガチン類のキラル全合成による構造決定 (1) 平成24年度の結果および確立した不斉反応をもとに (+)-グレガチンBのキラル全合成を行う。(2) 3-ヒドロキシ酪酸の両エナンチオマーから、ペニシリノールBやグレガチンC+D(アスペルテトロニンB)の右半分に対応する1,4-ジイン構造を持つエステル体を合成する。(3) ペニシリノールBやグレガチンEの左半分に対応する (E)-4-ヨード-3-ブテン-2-オールの両エナンチオマーを、リパーゼによる光学分割を利用し合成する。 もし、2が計画通り進まない場合は文献既知の光学活性な2-メチル-3-ブチン-1,2-ジオールからプロパルギルアセテートへ変換後、鍵反応を用いて光学活性な3(2H)-フラノンを合成する。その後、数工程の化学変換で光学活性な右半分に相当するヨードアルケンへ導き、左半分とカップリングすることで(+)-グレガチンBのキラル全合成を達成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.未使用額が発生した状況 光学純度の測定にキラルカラムを用いたHPLC分析を行っている。測定条件のスクリーニングのために新たなキラルカラムの購入を検討していたが、所持していたカラムで条件が確立し、すぐに購入する必要が無くなったため。 2.今後の使用計画 反応試薬(キラル配位子やパラジウム触媒、および基質合成に必要な試薬など)、TLC・カラム用シリカゲル(反応の追跡用TLC、精製用のPTLC、および順相のシリカゲル)、カラム用および反応用溶媒を購入する予定である。キラルカラムは経年劣化により使用できなくなるため買い替えを検討している。また、設備備品としてインテリジェントインテグレーターを購入する予定である。
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