研究課題/領域番号 |
24790026
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
日下部 太一 東邦大学, 薬学部, 講師 (00600032)
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キーワード | パラジウム触媒 / フラノン / カルボニル化 |
研究概要 |
本年度は平成24年度の結果をもとに鍵反応の不斉触媒化について、さらなる配位子の検討を行った。その結果、硝酸パラジウムおよびスルホキシド‐オキサゾリン配位子を用いることで最高68%eeの成績体が64%の収率で得られることが分かった。 しかし、現時点では不斉反応成績体を光学活性なグレガチン類の合成に用いるには光学純度が不十分であるため、光学活性な原料を用いてグレガチン類の合成を検討した。すなわち、文献既知である光学活性な2-メチル-3-ブチン-1,2-ジオールから対応するプロパルギルアセテートへ変換後、鍵反応を用いて光学活性な3(2H)-フラノンを合成した。その後、数工程の化学変換で光学活性な右半分に相当するヨードアルケンへ導き、左半分に相当するアルケニルボレートとカップリングすることで(+)-グレガチンBのキラル全合成を達成した。さらに、グレガチンEの左半分に対応する (E)-4-ヨード-3-ブテン-2-オールの両エナンチオマーを光学活性な原料から合成し、右半分に相当する光学活性なアルケニルスタナンとそれぞれカップリングすることでグレガチンEの2種類のジアステレオマーを合成した。各種データを天然物と比較することで、(+)-グレガチンEの初の全合成を達成するとともに、その絶対配置を (5R, 5’S) と決定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.(+)-グレガチンBのキラル全合成および(+)-グレガチンEの初の全合成を達成することで本合成戦略の有用性が確認できたため。 2.鍵反応の不斉触媒化において、スルホキシド‐オキサゾリン配位子を用いることで収率および選択性の向上が見られたため。
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今後の研究の推進方策 |
1.鍵反応の不斉触媒化(1)平成25年度の結果から、比較的良好な結果を与えたキラル配位子をもとに配位子の構造最適化および反応条件の最適化を行うことで収率・選択性の向上を目指す。(2)最適条件を設定した後、1,1-ジエチニルアセテートの基質一般性を検討する。 2.グレガチン類のキラル全合成による構造決定(1)平成25年度に確立した合成ルートをもとに、未だに構造決定がなされていないペニシリノールAおよびBのキラル全合成を検討する。具体的にはペニシリノールAおよびBに対応するアシル基を有するプロパルギルアセテートを調製し、鍵反応を利用して右半分に対応する3(2H)-フラノン骨格を合成後、左半分とのカップリングを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には業務を効率化し、より研究を推進する目的で前倒し支払請求を行い、自動精製装置を購入した。その結果、業務の効率化のみならず、カラム精製に必要な溶媒量を削減することができた。そのため、研究経費の削減が可能となり次年度使用額が生じた。 平成26年度は主に反応試薬、TLC、カラム用シリカゲル、カラム用溶媒および反応用溶媒などの消耗品を購入する予定である。
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