本年度は平成25年度の結果をもとに、鍵反応の不斉触媒化について反応条件のさらなる検討を行った。まず、溶媒の検討を行った。反応は5 mol% の硝酸パラジウム、7.5 mol% のスルホキシド‐オキサゾリン配位子および1.5等量のパラベンゾキノン存在下、一酸化炭素雰囲気下(balloon)、-10℃で行った。また、光学純度の決定は反応成績体をフラノンへ導き、キラルカラムを用いたHPLC分析により決定した。溶媒をメタノールからエタノール、1-プロパノール、2-プロパノールと順次かさ高くすると収率は低下するものの、選択性の向上がみられた。よりかさ高いtert-ブチルアルコールを用いた場合は反応が進行しなかった。次に収率の向上を目指して2-プロパノール中で上記の条件下、additiveを検討した。種々のルイス酸、具体的には塩化鉄、塩化ニッケル、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化銅、塩化インジウム、塩化アルミニウム、酢酸銀、酢酸亜鉛、硝酸インジウム(各5 mol%)を検討した結果、塩化亜鉛を用いたとき70 % eeの成績体が64%の収率で得られることを見出した。さらに、反応温度、additiveの等量を検討したところ、上記の条件下、0℃にて無水2-プロパノール中、塩化亜鉛のテトラヒドロフラン溶液を20 mol%用いることで収率を75%(70 % ee)まで向上することができた。成績体は良好な収率でフラノンのイソプロピルエステル体へ変換できた。さらに、メタノール中、オルトチタン酸テトライソプロピルを用いたエステル交換で収率良く(+)-グレガチンBおよびEの鍵中間体へ導くとともに形式合成を達成した。鍵反応については一般性を検討するまでには至らなかったが、実用的なレベルの収率・選択性を達成することが出来た。今後は混合溶媒を検討し、さらなる向上を目指していきたい。
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