平成26年度は、研究計画に基づき、細胞膜(脂質二重膜)を標的としたジフェニルメチレンイミダゾリノン類(DPIN類)の脂溶性プローブへの展開を検討した。まずは、合成上の点から脂質の中でコレステロールをひな形とし、そのハイブリッドアナログ(Ch‐DPIN)を設計した。ジアリール部位に関しては、平成24年度の結果を参考にしてジフェニル構造を採用した。Ch-DPINの合成については、コレステノンを出発物質とし、ベックマン転位や申請者らの見出したDPIN構築反応を適用することで遂行し、不飽和度の異なる3種のCh-DPINを得た。次にそれらの蛍光特性を評価したところ、1種のCh-DPINにおいて、溶媒の流動性(粘性)に依存的な蛍光強度の増加がみられ、特にコレステロール濃度の増加と共に直線的な関係が観測された。これは脂質ラフトやリポタンパク質密度などに対する蛍光プローブとしての可能性を示唆するものであり、生化学的な観点からも有益な結果と考えられる。また、ジナフチル構造を有するCh-DNINの合成も完了した。今後、これらCh-DPIN、Ch-DNINの脂質二重膜での蛍光特性を評価し、好ましい知見が得られた場合には、グリセロリン脂質とのハイブリッド体へと誘導化を展開していく予定である。また、本年度は別に、申請研究前半部の内容(第2世代DPIN類の合成とその蛍光評価)について、研究論文の執筆とその際に必要な追加データの取得や解析も併せて行った。本論文は現在、有機化学系の学術誌に投稿中である。
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