研究課題/領域番号 |
24790030
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 祐輔 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 助教 (90509275)
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キーワード | キノキサリノン / シアノ基 / オパビラリン / カロベリン |
研究概要 |
キノキサリノン骨格は様々な天然物や医薬品に見られる重要な骨格であるが、その効率的かつ多様性を指向した合成法はこれまでに報告されていない。昨年度、申請者はシアノ酢酸アニリドのアセトニトリル溶液に空気雰囲気下、亜硝酸ナトリウム(5当量)及び硫酸(5当量)を作用させると、2位にシアノ基を有するキノキサリノン-1-オキシドが収率良く得られることを既に見出している。今年度は得られた生成物の誘導化および医薬品類合成への応用を中心に検討を行った。 種々の検討の結果、2位にシアノ基を有するキノキサリノン-1-オキシドのテトラヒドロフラン溶液に低温下様々なグリニャール試薬を反応させることで、2位のシアノ基を様々な置換基(フェニル基、p-メトキシベンジル基、エチル基、n-ドデシル基)へと変換できることを見出した。エチル基が導入された生成物を用いて、抗HIV活性を有するオパビラリンへと誘導することが可能であった。すなわち、1-オキシド部位を亜鉛、酢酸条件下にてジヒドロキノキサリノンへと還元した後、ベンジル基の脱保護によりオパビラリンの合成を達成した。また、p-メトキシベンジル基が導入された生成物からは耳鳴りの治療薬として用いられているカロベリンを迅速に合成することができた。すなわち、1-オキシド部位を亜ジチオン酸ナトリウムによってキノキサリノンへと還元した後、ジエチルアミノ基を導入することによって、カロベリンの合成を達成することができた。上記のように試薬によって還元の選択性を制御できることは、様々な誘導体合成をする上で重要な知見であると考えられる。また、本手法は様々な置換基を合成の終盤で導入できるため、多様性を指向した合成に非常に有効である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、以下の3つの検討項目を計画した。(1)2位のシアノ基の変換、(2)キノキサリノン-1-オキシドの化学選択的還元、(3)更なる官能基の導入。(1)(2)についてはそれぞれグリニャール試薬、亜鉛・亜ジチオン酸ナトリウムを用いることで達成できることを見出した。(3)についても1例ではあるが、予備的な知見を得ることができた。以上の結果より本年度は順調に進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで検討してきた課題をさらに発展させる。 (1)2位への炭素求核剤以外の求核種の導入 (2)医薬品類、天然物合成への応用 (3)キノキサリノン骨格合成の触媒化 (4)キノキサリノン以外の骨格合成への応用
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品等で調整を試みたが、どうしても1円余ってしまった。 消耗品の購入に充てる。
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