研究実績の概要 |
キノキサリノン骨格は様々な医薬品や天然物に見られる重要な骨格であるが、その効率的かつ多様性を志向した合成法の確立が今尚求められている。申請者は、昨年度までにシアノ酢酸アニリドに5当量の亜硝酸ナトリウムと硫酸を作用させると、酸化的なC-N結合形成反応を経てキノキサリノン骨格が得られることを見出している。また、シアノ基を炭素求核剤によって置換することで、抗HIV作用を有するオパビラリンや、耳鳴りの治療薬として既に使用されている(日本では承認されていない)カロベリンなどの多様な医薬品に誘導できることも見出している。 そこで、今年度は(1)反応生成物であるキノキサリノン2位(または3位)のシアノ基の更なる誘導体化、(2)生物活性化合物・医薬品合成への更なる応用、(3)キノキサリノン骨格合成の触媒化、(4)キノキサリノン骨格以外の骨格合成への応用について検討した。その結果、(1)について炭素求核剤以外に、アミドなどの窒素求核剤を導入できることを見出した。また、それを利用して(2)の喘息治療剤としての応用が期待されるアタキマストの合成へ応用できることを見出した。残念ながら、(3)の触媒化には至らなかったものの、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル (TEMPO)が反応を促進することを見出した。また、種々検討したものの(4)の他の骨格合成への応用についても良好な結果を得ることはできなかった。しかしながら、研究期間全体を通して概ね計画通りの成果が得られたと考えている。
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