高速かつ効率的な反応の開拓を目指してベンザインやラジカルなどの不安定な化学種に着目し、下記研究を行った。これら化学種は反応制御に困難が伴う一方、適した条件下に制御することで、これまで困難であった素反応の開発やターゲット合成の効率化が実現できた。 1.ベンザインを活用した反応:ベンザインとホルムアミドのπ結合挿入反応により生成するベンゾオキセテン中間体について、系統的な含酸素複素環合成を目指し、新たな連続反応を検討した。その結果、アセチレンジカルボン酸類共存下、π結合挿入反応~[4+2]環化反応が進行し、4H-クロメンのワンポット合成にも成功した。これら成果は学会発表や論文投稿により発信した。また、π結合挿入反応~[4+1]型反応を経由する反応を応用し、ベンゾフランのワンポット合成も行った。さらに、これまでの反応開発により得られたキサンテン化合物の新たな反応性を明らかとし、一部は論文にまとめた。さらに、ベンザイン研究の底上げを期し、効率的なベンザイン前駆体合成法について、汎用性のある合成法を見出し、これを国際特許出願した。 2.触媒的なラジカル反応:本研究は、光感応性色素の一電子酸化還元能や遷移金属イオンの酸化還元能に着目し、検討した。その結果、入手容易な有機色素を用いて、触媒的なアルキルラジカルの発生条件を見出し、いくつかの水中ラジカル反応において有効に働くことを明らかにした。それらの成果は学会発表や論文投稿により発信した。また、鉄の酸化還元サイクルを利用する、活性メチレン化合物やキノン系化合物を基質としたラジカル環化反応について新たな環化反応を見出し、鎖状化合物から一挙に二環性化合物の合成も可能となった。成果の一部は、学会発表により発信し、触媒化の展開や論文投稿のためにまとめつつある。
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