研究課題/領域番号 |
24790037
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 孝司 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20604458)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | デリバリーシステム / リポソーム / 脂質抗原 / 癌免疫 |
研究概要 |
平成24年度は、α-Galactosylceramide(GalCer)搭載ナノ粒子(GC-NP)の構築及び最適化を行った。リン脂質、コレステロール及び膜透過性ペプチドであるオクタアルギニンを含む溶液にGalCerを添加し、水和法によりナノ粒子を調製することに成功した。GC-NPを樹状細胞株であるJAWSII細胞に導入し、CD1dへのGalCerの抗原提示効率をフローサイトメトリーにより解析した。その結果、導入量依存的にCD1dにGalCerを提示している細胞の割合は増加し、10μg/mlの濃度では約90%の細胞に抗原提示が認められた。またナノ粒子化していないGalCer単独導入と比較して、約100倍の効率でCD1d抗原提示を誘導できることが明らかとなった。続いて、GC-NPをマウス尾静脈から投与し、CD1d抗原提示により活性化したNKT細胞から産生されたIFN-γの血清中濃度を測定した。しかしながら、予想に反してGalCer単独投与群と同程度のIFN-γ濃度であった。そこで、ナノ粒子のサイズ制御とポリエステルグリコール付加によるを抗原提示細胞への送達促進を目指した最適化を行った。その結果、最適化前のGC-NPと比較して、約5倍のIFN-γ濃度の上昇が認められた。また最適化前後のGC-NPの体内動態を評価した結果、最適化することで、リンパ器官である脾臓への集積が飛躍的に上昇していた。以上の結果から、最適化GC-NPは、脾臓への高い移行性により抗原提示細胞への送達効率が向上し、GalCer単独投与と比較して、顕著なIFN-γ産生促進を誘起したと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究目標は、α-Galactosylceramide(GalCer)搭載ナノ粒子(GC-NP)の構築を行い、抗原提示細胞における細胞内動態制御(in vitro)及び体内動態制御(in vivo)によりGC-NPの最適化を行うことであった。GalCerのナノ粒子化は、特に大きな問題等はなく達成できたと考えている。また細胞内動態制御(in vitro)に関しては、低膜融合性脂質と高膜融合性脂質を用いて調製したGC-NPを用いて最適化を行い、膜融合性の高い脂質組成よりも安定性が高い脂質組成の方がCD1dへの抗原提示が高いことを明らかにした。一方で、in vivoの検討では、GalCer単独群と同程度のIFN-γ産生という予想外の結果になったものの、GC-NPの体内動態制御により、約5倍のIFN-γ濃度の上昇に成功した。以上のことから、当初の研究計画通りに進んでおり、平成24年度の計画はほぼ達成したと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
H24年度に最適化したGC-NPを用いて抗腫瘍活性を調べると共に、その抗腫瘍活性メカニズムがGalCerによる免疫応答によるものかを検証する。 まず、メラノーマ肺転移モデルを作製するために、マウス尾静脈から投与するルシフェラーゼ安定発現B16細胞(マウスメラノーマ)の細胞数、評価日数などの条件検討を行う。作製した肺転移マウスモデルに最適化GC-NPもしくはGalCerのみを投与し、抗腫瘍効果を調べる。肉眼的観察とルシフェラーゼ活性による定量的な評価を行い、GC-NPの有用性を示す。さらにGC-NP投与後の脾臓中の抗原提示細胞におけるGalCerの抗原提示効率およびNKT細胞数を調べることで、GalCerのCD1d分子への抗原提示に起因するNKT細胞の活性化というGalCerが誘起する一連の免疫応答をナノ粒子化することで、促進することができるというProof of conceptを行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費が生じた理由:年度内に発注を行い納品されたが、支払いが4月以降になったために、当該研究費が生じた。翌年度分として請求した研究費と合わせた使用計画を以下に示す。 α-GalCer及び脂質類はDiaNPを構成する脂質を含み、全ての実験において必要となってくるため30万円を予定している、また細胞培養関連試薬に20万円を計上する。一方で平成25年度は、マウスを使用したin vivo実験が中心となるため、実験動物購入費として、25万を予定している。本研究の評価系は、顕微鏡やフローサイトメーターを用いた細胞内動態解析、免疫染色やELISA法によるサイトカイン産生が主であるため、免疫関連試薬及び蛍光試薬に、平成25年度は30万、20万を予定している。 情報収集及び成果発表を行うための学会参加費(日本薬剤学会)として国内旅費を10万円、海外の関連学会(Controlled release society)へ参加費として25万円を予定している。また本研究成果を論文にまとめるために、論文投稿や校正に必要な費用として10万円を予定している。
|