研究課題/領域番号 |
24790039
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平松 弘嗣 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90419995)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | レクチン / 紫外共鳴ラマン / 糖結合 / pH依存性 |
研究概要 |
本研究の目的は、水溶性糖鎖-レクチン結合の分子間相互作用pH依存性を明らかにすること、ならびにこの知見を基に「細胞接着現象」の pH 依存性に関わる因子を検証することである。初年度は水溶性糖鎖ーレクチン結合の分子間相互作用pH依存性とその分子機構を解析した。 ヒトガレクチン1(hGal-1)はβガラクトシドに特異的に結合するレクチンである。βガラクトシドの一種、ラクトース(Galb1-4Glc)への結合に伴い、糖結合ポケットに存在するTrp68の環境の極性が減少し、これにともないTrp68蛍光波長が短波長にシフトする。Trp68の蛍光波長をプローブとして、hGal-1のラクトース結合割合のラクトース濃度依存性を解析し、ラクトース結合における結合定数(Kb)を求めた。hGal-1のラクトース結合におけるKbにはpH依存性が見られることを明らかにした。 どのようなタンパク質構造のpH依存性がKbのpH依存性をもたらすか、という問題を明らかにするために、分光学的手法(紫外吸収、蛍光、円偏光二色性、紫外共鳴ラマン)を用いて解析を行った。hGal-1のアミノ酸配列にはHis44およびHis52が含まれる。紫外共鳴ラマンスペクトルの解析から、それぞれのHis残基のプロトン化pKaを5.7および6.3と決定した。また、His52側鎖のプロトン化に伴い糖結合ポケット周辺で主鎖構造変化が起こること、His44側鎖のプロトン化に伴いラクトースとHis44の相互作用が消失し、同時にHis44-Trp68の間にカチオンπ相互作用が生じることを示した。His側鎖のプロトン化に伴うこれらの構造変化は、いずれもhGal-1のラクトース結合を阻害するものであり、酸性条件下でKbの低下をもたらすと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の実施項目は、ヒトガレクチン1を試料として「(初年度)ラクトース結合定数のpH依存性の測定、およびpH依存性の原因となるタンパク質構造の解析を行うこと」「(次年度)ラクトシルセラミド結合定数のpH依存性の測定、およびpH依存性の原因となるタンパク質構造の解析を行うこと」からなる。初年度は第一の項目を実施し、論文発表を行った。2ヶ年計画の初年度に計画の50%が完了したことから、概ね順調に伸展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では水溶性ラクトースに対するhGal-1の結合定数KbのpH依存性、およびその原因となるタンパク質構造変化を明らかにした。同様の実験手法を用い、ラクトシルセラミド含有リポソームを作製して「脂質膜に密集したラクトース構造」に対するhGal-1の結合定数を解析する。局所的に密集した糖鎖に対し、hGal-1の結合が促進されるか、阻害されるか、明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
緩衝液、ラクトシルセラミド、および脂質等の試薬を購入する。 実験に用いるガラス器具および消耗品類を購入する。 分光測定装置の光源ランプや試料セルなどの消耗品類を購入する。
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