研究課題
本研究は、固体分散体を水に分散した際に形成される薬物過飽和溶液の形成・安定化メカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度は、平成24年度に予備検討を行った薬物(メフェナム酸)/水溶性ポリマー(Eudragit EPO)過飽和溶液の分子状態について、High resolution-magic angle spinning (HR-MAS)測定を用いて詳細に検討を行った。2次元1H/1H nuclear Overhauser enhancement spectroscopy (NOESY)NMR測定の結果、 これまで評価が困難であった過飽和溶液中における薬物とポリマーの分子間相互作用を検出することにはじめて成功した。さらに2次元1H/1H radio-frequency driven recoupling (RFDR)NMR測定の結果、過飽和溶液中における薬物とポリマーの相互作用はflexibleであることが明らかとなった。ここで観察された過飽和溶液中の薬物とポリマーの分子間相互作用は、固体分散体で形成されたものと同様であり、固体分散体で形成された分子間相互作用が水分散後にも維持されていることが明らかとなった。本年度の研究により、過飽和溶液中の薬物とポリマーの分子間相互作用の評価にHR-MAS測定が極めて有効であることを示した。ここで得られた知見は、トライ&エラーの状況が続いている固体分散体・過飽和溶液の処方設計・品質評価にブレイクスルーを与えるものと期待できる。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度に実施予定であった、HR-MAS NMR測定(応用測定:2次元測定)による過飽和溶液中の薬物とポリマーの分子間相互作用の評価まで達成できた。一方、Real-time NMR測定については、良好な実験系を確立することが出来なかった。
メフェナム酸ーEudragitEPO固体分散体または他の薬物ーポリマー固体分散体について、水分散直後からのReal-time NMR測定を行う。HR-MASまたはsuspended-state NMR測定はMASの影響で、Real-time NMR測定に不適と考えられた。そこで、static条件下で各種Ream-timeNMR測定を行う予定である。
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Molecular Pharmaceutics
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DOI: 10.1021/mp4005723
International Journal of Pharmaceutics
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