抗ウイルス薬による治療では耐性ウイルスの出現が問題となる。薬剤耐性評価は治療において適切な薬剤選択を行うために重要な情報であることから、当研究室では迅速な薬剤耐性評価法をめざし、ドッキングシミュレーションとボルツマン分布を用いたin Silico薬剤耐性評価法を開発している。その一方、ウイルスの型(亜型)ごとに薬剤耐性が異なることやドッキングシミュレーションによるスコアなども異なることから、その各々について本手法による耐性評価を行うことが必要となる。 そこで本研究ではHIVプロテアーゼ阻害剤であるアタザナビルと、インフルエンザノイラミニダーゼ阻害剤であるオセルタミビルを中心に検証を行った。その結果、アタザナビルにおいては耐性の非常に強い変異体については適切に評価が行えていた。一方、期待値が中等度以下のものの評価が一定しなかった。また、オセルタミビルにおいてはH1N1亜型とB型に対して適切な評価が行えていた一方で、H3N2、H5N1亜型では適切な評価ができなかった。 この理由として、現在のドッキングシミュレーションでは試行により結果が異なるため、3回ずつ結果を出力しその平均を取ることで耐性評価を行っていたが、これではまだ不足するため、さらに多くの試行による平均を用いたり、出力数を増やしたりするなどの評価を行うことが必要であると考えられる。また、オセルタミビルのH5N1亜型に対しては、上記で充分な評価ができていなかったものの、分子力場を変更することにより耐性評価の結果が改善されたため、力場についても今後検討の必要がある。
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