研究課題/領域番号 |
24790044
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山田 佳太 近畿大学, 薬学部, 研究員 (80584185)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ロタウイルス / 糖鎖アレイ / 糖鎖構造解析 / N-グリコリルノイラミン酸 |
研究概要 |
本年度は、ヒトロタウイルスが認識する宿主細胞上の糖鎖構造を特定するため、ヒトロタウイルス高感受性細胞(MA104細胞)が発現する糖鎖の構造解析及び、糖鎖アレイを用いたロタウイルス認識糖鎖のスクリーニングを実施した。 MA104細胞上の糖タンパク質糖鎖を網羅的に解析した結果、アスパラギン残基結合(N-結合)型糖鎖は、高分岐型糖鎖やポリラクトサミン型糖鎖等の高分子糖鎖が大量に観察された。さらに、分子内にラックダイナック構造や硫酸及びリン酸基を含む糖鎖も観察され、複雑な糖鎖プロファイルを示した。 一方、セリンスレオニン残基結合(O-結合)型糖鎖は、コア構造にCore 1およびCore 2構造を持つ糖鎖が主に観察された。さらに、N-結合型糖鎖と同様にポリラクトサミン構造を形成しているものが観察された。また、シアル酸分析を実施した結果、MA104細胞はN-アセチルノイラミン酸と共にN-グリコリルノイラミン酸(NeuGc)を多量に発現していることが明らかになった。 前述したこれらの糖鎖構造の多くは、MA104細胞に特異的に観察されるため、ロタウイルスの標的糖鎖となる可能性が高い。そこでMA104細胞から、これらの糖鎖を調整し、調整した糖鎖をスライドガラス上に固定化し、糖鎖アレイを作製した。ヒトロタウイルス(MO株)と親和性を示す糖鎖構造を、作製した糖鎖アレイを用いてスクリーニングした結果、MO株ウイルスは、NeuGcに高い親和性を示した。これまで、MO株ウイルスの認識糖鎖は明らかにされていなかったため、本研究で得られた知見は極めて新規性が高いと考えらえる。 一般的にヒト組織では、NeuGcは発現しないと言われているが、最近、ヒト体内にもNeuGcが発現するという事例が多くの研究機関で報告されており、ヒトロタウイルスの感染に、NeuGcが関与している可能性が高いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画した実施項目は、(1)ロタウイルス高感受性細胞が発現する糖タンパク質糖鎖の構造解析、(2)(1)で特定した糖鎖構造を用いた糖鎖アレイの作製、(3)作製した糖鎖アレイを用いたロタウイルス認識糖鎖の特定の3項目である。当初の研究計画通り、3つの研究項目を達成し、ヒトロタウイルス(MO株)がN-グリコリルノイラミン酸を有する糖鎖を認識することを明らかにした。以上の成果から、本研究課題は順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討により、ヒトロタウイルス(MO株)がN-グリコリルノイラミン酸(NeuGc)を認識することが明らかになった。今後は、ロタウイルス高感受性細胞に発現するNeuGc含有糖タンパク質を、グライコプロテオミクス技術を用いて網羅的に同定する。同定した糖タンパク質の性質をデータベース検索及び文献調査により精査し、ウイルス感染メカニズムを考察する。また、NeuG含有糖鎖による、ロタウイルス感染阻害効果を評価し、糖鎖構造を基盤とした抗ロタウイルス剤創薬の可能性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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