研究課題
ロタウイルス高感受性細胞中の糖タンパク質糖鎖を網羅的に解析した結果、N-グリコリルノイラミン酸(NeuGc)、硫酸化糖鎖、リン酸化糖鎖、ポリラクトサミン型糖鎖等が特徴的な糖鎖として観察された。前年度実施した糖鎖アレイ解析により、ヒトロタウイルスとNeuGcが相互作用することが明らかになった。本年度ではまず、NeuGc以外の特徴的糖鎖とウイルスとの相互作用解析を実施した。その結果、ヒトロタウイルスは、NeuGc以外に硫酸化糖鎖、特にガラクトースの6位が硫酸化された糖鎖と非常に強い相互作用を示した。これらの解析結果から、ロタウイルスは複数の糖鎖と相互作用することで感染を成立させることが示唆された。ヒトロタウイルス認識糖鎖解析の結果を基に、ウイルス認識糖鎖のキャリア分子の特定を試みた。Guo らは、細胞表面の糖脂質糖鎖を切除するとウイルスに対する細胞の感受性が低下することを報告している(J Biochem. 126(4):683-8 (1999))。当初申請者は、糖タンパク質がウイルスレセプターとなる可能性が高いと推測していたが、この報告から糖脂質糖鎖についても評価する必要があると考えた。そこで、ロタウイルス高感受性細胞が発現する糖脂質糖鎖を網羅的に解析した。その結果、糖脂質上にもNeuGc並びに硫酸化糖鎖が観察された。さらに、糖タンパク質と糖脂質上に発現するNeuGc及び硫酸化糖鎖の発現量を比較すると、糖脂質上のNeuGc及び硫酸化糖鎖の量が、糖タンパク質上に存在するものに比べて約3倍の値を示した。この結果から、ヒトロタウイルスと相互作用する糖鎖の主要なキャリア分子は糖脂質であることが示唆された。以上の研究成果を学術誌に投稿する予定である。また、NeuGcによるヒトロタウイルス感染阻害効果を評価した結果、弱い阻害効果が認められた。今後は、硫酸化糖鎖を用いた感染阻害実験を行い、抗ウイルス薬の候補化合物となりうるか評価する。
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