研究課題/領域番号 |
24790045
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山口 佳宏 熊本大学, 環境安全センター, 准教授 (10363524)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 酵素 / 阻害剤 / X線結晶構造解析 / 速度論的解析 |
研究概要 |
メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)は、臨床で使用されているほとんどすべてのβ-ラクタム剤抗生物質を加水分解する酵素であることから、その阻害剤開発が臨床上で求められている。本研究では、大量に調製された種々のMBL酵素が赤紫色を呈していることに着眼し、これが大腸菌または培地由来の有色性化合物がMBLに結合していると考え、MBLに結合しているだろう化合物の分離とその構造決定、さらに物理化学的手法を用いた酵素レベルにおける相互作用解析を行うことが目的である。 平成24年度は、MBLであるIMP-1の大量調製を行い、変性剤および酸によってIMP-1を変性させ、限外ろ過によってIMP-1に結合している可能性がある化合物の分離を行った。結果としては、変性剤によるIMP-1変性では化合物の分離は観察できなかったが、酸変性によって化合物の分離を紫外・可視吸光光度計で確認することができた。 このことにより、大腸菌などで大量に調製された蛋白質には、大腸菌由来または培地由来の化合物が結合している可能性があり、さらに以上の方法で分離できることが示唆された。 平成25年度は分離された化合物の構造決定を行い、さらに蛋白質-化合物相互作用を分子レベルで詳細に解析する。そのためにIMP-1を大量に調製し、酸変性によってIMP-1に結合した化合物を分離する。分離された化合物の成分を調べるために、HPLCによって成分数を調べ、複数あるときは分取カラムによって分離する。その後、NMRなどの方法を駆使して、IMP-1に結合していた化合物の特定を行う。また特定できた後は、IMP-1に対する阻害定数の算出、X線結晶構造解析による可視化によって、MBL-化合物複合体の相互作用を詳細に解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、MBLであるIMP-1から酸変性によって紫外領域に吸収を持つ化合物の分離を行うことができた。この結果は、計画通りである。ただIMP-1の収量が平成24年度から大幅に減り、その問題解決に時間を取られた。そのため他のMBL酵素(赤紫色を呈している)では、以上の検討が行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、MBLから酸変性によって分離された化合物を、大量に調製する。そのために大量のIMP-1が必要になる。 さらに得られた化合物をHPLCによって分離し、紫外・可視検出器でモニタすることで成分の数を同定する。この際、HPLC附属の分取カラムにとって、分離された化合物を分取する。その後、機器分析を駆使して、IMP-1から分離された化合物の構造を同定する。 以上の方法論が確立された場合、他のMBL酵素でも同様の実験を行い、赤紫色の原因化合物の同定を行い、これら化合物の構造的共通性を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、大腸菌および酵素のサンプル保存が増えたため、ディープフリーザーを購入する。またMBLを大量に調製するために培養用の試薬類など消耗品として使用する。 さらにデータが整い次第、学会発表を検討している。そのため旅費として使用する。
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