研究課題/領域番号 |
24790046
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
坂倉 正義 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 助教 (20334336)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 構造生物学 |
研究概要 |
StargazinとAMPARの相互作用解析を行うための第一段階として、両者のリコンビナントタンパク質発現系の構築を行った。 Stargazinについては、Pichia pastorisに対してヒトStargazin遺伝子を形質転換し、導入されたStargazin遺伝子のコピー数が高いクローンを選択した。次に、ファーメンタを用いた酵母の培養条件を最適化し、メタノールによりStargazinの発現を誘導した。酵母細胞の破砕条件を最適化し、細胞破砕液を解析した結果、膜画分にStargazinが発現していることを確認した。膜中に発現したStargazinを界面活性剤Empigenにより可溶化した後、界面活性剤をDDM, LDAO, LMPGに置換し、それぞれサイズ排除クロマトグラフィーによりみかけの分子量を解析した。この結果、DDMに可溶化したStargazinは、分子量約60Kと比較的低分子量の位置にシングルピークとして溶出した。一般に困難であると考えられている、微生物を用いたヒト膜タンパク質の膜発現に成功した点、およびStargazin精製の初期条件を整備した点を重要性の高い研究成果と意義付ける。 AMPARについては、ヒトGluR2のリガンド結合領域(GluR-LBD)の遺伝子を大腸菌に形質転換し、大腸菌の不溶性画分中に目的タンパク質を得た。不溶性画分中のGluR-LBDをグアニジンにより変性して可溶化した後、透析法により巻き戻し、精製を行った。得られたGluR-LBDについてNMRスペクトルを測定し、これまでに報告されているラット由来GluR-LBDと同様のスペクトルを得ることに成功した。1L培養あたり5 mgの安定同位体標識ヒトGluR-LBDを安定的に得る発現・精製プロトコールを確立した点を、重要な研究成果と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Niレジンによる精製後のStargazinの収量が1L培養あたり1 mg以下と低く、NMR等を用いたStargazinの性状解析、AMPARとの相互作用解析を行うために充分な量のタンパク質サンプルを得ることができなかったため。 AMPARについては、研究計画どおり進行し、年度内目的を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず、リコンビナントStargazinの収量を増加させるための条件検討を行う。具体的には、まず発現用ベクターの最適化について検討を行う。次に、プロテアーゼ欠損株の利用など、発現用酵母株の検討を行う。さらに、細胞破砕・膜抽出などタンパク質の精製過程におけるロスを軽減するためのプロトコールの最適化を進める。 Stargazinについて、1L培養あたり1 mg程度の収量が確保された時点で、CD、NMRなどを用いたリコンビナントStargazinの物理化学的性状解析を行う。同時に、サイズ排除クロマトグラフィー、NMRを用いたStargazinとAMPAR-LBDの親和性解析に着手する。 さらに、Stargazinについて、1L培養あたり5 mg程度の収量が確保された時点で、NMRを用いたリコンビナントStargazinの高次構造解析に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続き、遺伝子・生化学実験試薬に費用が見込まれる。また、Stargazinを可溶化するための界面活性剤、NMR実験を行うための安定同位体試薬の購入に研究費を充てる。
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