平成26年度は、Cry j 1修飾リポソームの標的の同定ならびにその標的特異性を明らかにすることで、作用メカニズム解析を行った。まず、スギ花粉症モデルマウスにおいてCry j 1修飾リポソームの標的となりうる免疫細胞の存在を明らかとするために、脾臓中のCry j 1認識細胞をFACS解析した。この結果、Cry j 1による感作後、経時的にCry j 1認識B細胞の割合が増加することが明らかとなった。さらに蛍光標識Cry j 1修飾リポソームを用いて、脾臓細胞への取り込みを解析したところ、未修飾のコントロールリポソームに比べ、Cry j 1修飾リポソームはより多く取り込まれることが明らかとなった。次にCry j 1感作マウスに蛍光標識Cry j 1修飾リポソームを尾静脈内投与し、その後の脾臓細胞における分布を観察した。結果、Cry j 1修飾リポソームは脾臓内においてB細胞集団と共局在しており、さらに抗体産生の場として知られる胚中心に多く取り込まれていることも確認できた。さらに、逆標的化を利用した本治療戦略の他の免疫への影響を調べるために、Cry j 1およびOVAにて共感作したマウスに対するドキソルビシン内封Cry j 1修飾リポソームの治療効果の検討を行った。この結果、Cry j 1修飾リポソームは、OVA感作マウスの抗OVA IgE抗体の産生には影響を与えず、Cry j 1感作マウスに対して抗Cry j 1 IgE抗体の産生を有意に抑制し、一方でドキソルビシン内封OVA修飾リポソームは、OVA感作マウスに対してのみ、抗OVA抗体の産生を抑制することが明らかとなった。これらの結果から、逆標的化を利用したスギ花粉症に対する本治療法は、リポソーム表面に修飾した抗原に対して特異的な免疫細胞に対して作用することで治療効果を示す、安全かつ有効な治療法であることが示された。
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