アポEからなる脂質ナノディスクを作製し、腫瘍細胞への集積性評価を行った。まず、HepG2細胞(ヒト肝癌細胞)におけるLDLレセプターの発現をウエスタンブロットによって確認した。アポEナノディスクは、通常の培地においてもHepG2細胞への集積が認められたが、LDLレセプターの発現が増加するとされているLPDS含有培地においては集積が約2倍に増加した。このことから、アポEナノディスクのHepG2細胞への集積にはLDLレセプターが関与していることが推察された。レセプターへの結合と細胞内への内在化が起こる37℃における集積量とレセプターへの結合のみが起こる4℃における集積量の差から細胞内への内在化が示され、実際に蛍光顕微鏡によってもアポEナノディスクのHepG2細胞への集積が確認された。 そこで、前年度に作製したアポE分子のLDLレセプター結合領域からなるペプチド(LDLR-BRペプチド:20残基)および連結型LDLR-BRペプチドを用いて脂質ナノディスクの調製を試みた。しかしながら、脂質成分としてホスファチジルコリン以外のリン脂質についても検討したにもかかわらず、安定な脂質ナノディスク粒子を調製することはできなかった。そこで現在、安定な脂質ナノディスクを形成することが知られているアポA-Iのモデルペプチド(18Aペプチド:18残基)とLDLR-BRペプチドとの連結型ペプチド(LpAペプチド)を作製し、脂質ナノディスクの調製を検討している。
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