本研究は、生体内酸化還元(レドックス)変化の非侵襲的な測定により、様々な病態とレドックス変化の関係をより詳細且つ正確に明らかにするために、レドックス測定用プローブで標識した肝実質細胞指向性リポソームの合成を目指している。26年度は25年度に引き続き肝実質細胞指向性を持たせる為のガラクトース修飾リン脂質の合成法を検討するとともに、24年度に合成に成功したレドックス測定のためのリン脂質結合型ニトロキシルラジカル(DMPE-PROXYL)の還元反応に対する反応性などを検討した。 合成したDMPE-PROXYLを含むリポソームを調製し、DMPE-PROXYLがリポソーム中に存在することを動物用MRIを用いて確認した。DMPE-PROXYLを含むリポソーム懸濁液では懸濁液全体の輝度が高く、PROXYLが懸濁液全体に広がっていることが判明した。その後、遠心操作によりリポソームを沈殿させたところ、上清に比べて沈殿の輝度が著しく高くなった。これらのことから、遠心後にDMPE-PROXYLがリポソームと共に沈殿しており、リポソーム膜中に安定して存在することが示された。また、DMPE-PROXYLを含むリポソームは肝ホモジネートと混和後もPROXYLのESRシグナルを保持しており、還元反応に対して耐性を示した。同様にアスコルビン酸による還元に対しても耐性を示したことから、生体への投与後、標的組織まで安定して運ばれることが期待される。
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