研究課題/領域番号 |
24790059
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
石井 雄二 国立医薬品食品衛生研究所, 病理部, 主任研究官 (70544881)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | DNA損傷 |
研究概要 |
平成24年度はLC-MS/MSによるDNAアダクトーム解析を用いた化学物質のDNA傷害性評価法の有用性を検討した。【実験1】では、エストラゴールを4週間強制経口投与したラット肝臓を用いて、m/z 300から600の質量範囲でDNAアダクトーム解析を行い、アダクトームマップを作製した。ES投与群ではm/z 398に1つ、m/z 414に2つの新たなスポットが認められ、これらのスポットはES-N6-dA、ES-N2-dG及びES-C8-dGと一致し、ESの投与量依存的大きくなることを確認した。ES高用量群のラット肝DNAでは、m/z 374にESとdCの付加体と考えられるスポットも検出された。また、これらのスポットはいずれもdG、dA及びdCの分子量の平均248.5にESの分子量を足した396.7 ± 50の範囲内で検出されており、被験物質の分子量を基に検索質量範囲を限定することで迅速な網羅的DNA付加体解析が可能であると考えられた。【実験2】では、ルビアジンを1週間混餌投与したラット腎臓及び肝臓についてDNAアダクトーム解析を実施した。検索質量範囲は248.5 + 254.2 ± 50 を基にm/z 453から553とした。Rubを投与したラット腎臓及び肝臓のアダクトームマップではm/z 520、504、502及び480に新たなスポットが認められ、これらのスポットのうち2つはLuc-N2-dG及びLuc-N6-dA付加体と一致した。また、m/z 480はdCの付加体と考えられたものの、m/z 502及び数個のm/z504のスポットについては未知の付加体であった。これらの結果から、DNAアダクトーム解析法を応用することで、化学物質の迅速かつ網羅的なDNA傷害性評価が可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は構築したDNAアダクトームシステムをエストラゴール及びルビアジンを投与したラット肝臓又は腎臓DNAの解析に適用することで、化学物質のDNA傷害性評価法としての有用性を検討した。これらの実験はいずれも当初の研究計画通り進行した。また、得られた結果は化学物質のDNA傷害性評価法としてのDNAアダクトーム解析の有用性を裏付けるものであり、研究計画に変更の必要がないことから順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に構築したDNAアダクトーム解析法をgpt deltaラットに適用し、in vivo遺伝子傷害性・変異原性試験のアプリケーションを取得する。雄性6週齢のgpt deltaラットに種々の遺伝毒性発がん物質を発がん用量で4週間投与し、主要臓器である肝臓、腎臓及び肺を用いて、DNAアダクトーム解析によるDNA付加体の検出と、点突然変異を検出するgpt assay及び欠失変異を検出するSpi- assayを実施し、変異原性を評価する。Gpt assayではシークエンス解析によってgpt遺伝子上に生じた変異パターンについても解析を行い、DNA付加体の種類や生成量と遺伝子突然変異頻度及び変異パターンについて考察する。これらの結果を基にDNAアダクトーム解析が化学物質によるDNA付加体形成を探索する有用なツールになることを証明し、さらに、gpt deltaラット組み合わせた化学物質のin vivo遺伝子傷害性・変異原性試験の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に実施予定であった役務が当初の予定よりも低価格で行えたことから、予定額の一部を平成25年度分の消耗品費に充てることで、アプリケーションに使用する被験物質数を増やすことを予定している。
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