最終年度は二分子膜小胞体化したコレカルシフェロール誘導体含有リポソームの薬理活性評価を行った。コレカルシフェロール誘導体は、非活性体であるコレカルシフェロールと、代謝活性体であるカルシジオール及びカルシトリオールに大別される。HeLa細胞、HT-29細胞及びHepG2細胞を用いて、コレカルシフェロール誘導体含有リポソームの細胞毒性評価を行った結果、全ての細胞種において、カルシトリオール含有リポソームで最も高い殺細胞効果が得られた。また、既存の抗癌剤であるドキソルビシンと低濃度コレカルシフェロール誘導体含有リポソームの併用によって、ドキソルビシンの殺細胞効果が増強されることを明らかにした。さらに、これらの効果発現メカニズムを解析した結果、コレカルシフェロール誘導体が細胞内カスパーゼ発現量を増強し、アポトーシスが亢進することで殺細胞効果、並びに既存抗癌剤の薬理活性増強効果が得られることを見出した。 本研究期間全体を通じて、コレカルシフェロール誘導体含有リポソームは、その表面に一部露出したコレカルシフェロールと細胞表面のcaveolin-1との相互作用を介したカベオラ介在性エンドサイトーシスがその細胞内取込に一部関与している可能性を見出した。さらに、リポソームにコレカルシフェロール誘導体を含有することで、リポソーム自体に殺細胞効果を付与できること、さらに他の薬剤の薬理活性を増強できることを明らかにした。本研究において用いているコレカルシフェロール誘導体は、既に生体内代謝・消失過程が詳細に把握されており、生体適合性に優れる構成成分であると共に、近年、多様な新規薬理活性が見出されつつある。従って、本研究成果は生体適合性に優れ、かつ高い抗腫瘍活性等を示し得る新規リポソーム製剤を提供すると共に、有効かつ安全な治療計画の構築のための医薬品開発に資するものである。
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