研究課題/領域番号 |
24790061
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
杉本 邦久 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (00512807)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 共結晶体 / 放射光X線回折 / 精密構造解析 / X線構造解析 |
研究概要 |
2つ以上の有機分子が静電的相互作用により構築される共結晶体は、医薬的効能を保持しながら物性の制御が可能であり、新しい創薬技術として注目されている。しかし、医薬品の安定性試験は多種多様な条件で行われるため多大な時間と労力が費やされている。本研究では、より迅速な共結晶医薬品の安定性予測を行うため、放射光X線回折を用いた電子密度分布解析を基盤とした物性可視化法の構築を目的とした。まず、物性可視化法の構築の手がかりとなる情報を得るために安定性が報告されているカフェインと4種のジカルボン酸化合物(Oxalic acid、 Malonic acid、Maleic acid、Glutaric acid)との共結晶体の合成から着手し、熱的物性を確認した。さらに、アルキル鎖の違いによる安定性を検討するために、より長いアルキル鎖を有するジカルボン酸化合物(Adipic acid、Pimelic acid、Suberic acid、Azelaic acid)との新規共結晶体の合成を行ない、TG/DTAによる熱分析測定を行った。これらのカルボン酸基を有する化合物により構築したカフェイン共結晶体は、放射光X線回折実験を行い、観測された単結晶及び粉末データから結晶構造を決定した。精密構造解析によるそれぞれの共結晶体の詳細な電子密度分布、静電ポテンシャル分布、電荷密度分布については現在解析中である。今後、これらの共結晶体群を実験的に直接観測した電子密度分布、静電ポテンシャル分布、電荷密度分布からそれぞれ、分子の結合性、電子分極、分子の極性を定量化し、湿度安定性を制御している分子間相互作用の特定を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたジカルボン酸基を有するカフェイン共結晶体の合成、放射光X線回折実験、熱分析測定は、完了しているが、一方で、物性との相関を検討するための精密構造解析による共結晶体の詳細な電子密度分布、静電ポテンシャル分布、電荷密度分布について、全ては完了しておらず、現在、解析中の部分がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に構築したカフェイン共結晶体の精密構造解析により定量化した分子の結合性、極性から物性(溶解度、熱・湿度安定性)を制御している分子間相互作用を解明する。また、ピリジン、アミド基、ピリダジンなどの水素結合部位を有する有機化合物を用いて新規なカフェイン共結晶体を構築する。得られた新規カフェイン共結晶体の物性については、熱分析及び熱・湿度安定性や溶解性などの測定を行い、明らかにする。共結晶体群の精密構造解析から、それぞれ分子の結合性、電子分極、分子の極性の定量化を行い、物性を制御する分子間相互作用を特定する。様々な分子間結合部位を有するカフェイン共結晶体群の定量的な知見に基づき、熱・湿度安定性や溶解性を制御している分子間相互作用を数値化する。定量化した知見から共結晶体内分子の電子密度分布解析を基盤とした医薬品の物性可視化法を確立する。最終的には、構造物性科学の視点から共結晶医薬品の安定性を予測し、要求される物性を発現する医薬品共結晶体の分子機能設計の議論を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究遂行上、共結晶体の合成に必要な高額なガラス器具などが発生したために、一部の物品費を平成25年度に繰り越した。また、平成25年度の研究費の主な使用計画は以下のとおりである。①物品費:医薬品共結晶体の合成及び結晶化のために、合成試薬、実験器具などを購入する。②国内及び外国旅費:研究成果の発表や他研究機関で実施する測定を行う。③その他:元素分析測定など依頼分析の費用及び論文投稿費用などに充てる。
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