研究概要 |
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、ヒトゲノムにおいて最大の遺伝子ファミリーを形成し、様々な生理的・病理的現象に関与する。リガンド未知(オーファン)GPCRのリガンドを同定することやGPCRの共役する三量体Gタンパク質(Gs, Gi, Gq, G12)を解析することは、GPCRの機能解明や創薬に密接に関わる重要な研究である。研究代表者はこれまでに、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGFα)のエクトドメイン切断を指標としたGPCR活性化検出系(TGFα切断アッセイ)を確立した。本研究ではTGFα切断アッセイを用いてオーファンGPCRのリガンドを探索するとともに、共役するGタンパク質を評価するアッセイ系を開発した。 種々の生理活性に対するオーファンGPCRのスクリーニングの結果、リゾホスファチジルセリン(LysoPS)に特異的に応答する3種類のGPCR(P2Y10, GPR174, A630033H20)、リゾホスファチジルグルコースにより活性化される1種類の受容体、酸化リン脂質に応答する2種類の受容体、酸化脂肪酸により活性化される2種類の受容体を同定した。 TGFα切断に関与するシグナルを解析したところ、GqシグナルとG12シグナルがTGFα切断応答を引き起こすことがわかった。特に既存のGPCRアッセイよりもG12シグナルの高感度・高精度検出として優れていた。そこで、G12シグナルのみを選択的に検出する目的でGqを欠損させたHEK293細胞(GNAQ,GNA11遺伝子ノックアウト)とGqとG12を欠損させたHEK293細胞(GNAQ,GNA11,GNA12,GNA13遺伝子ノックアウト)をCRISPR-Cas9システムを用い作製した。これらのGタンパク質欠損細胞を用いたTGFα切断アッセイを行うことで、G12シグナルを選択的かつ高精度に評価することが可能であった。
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