家族性パーキンソン病の責任遺伝子のひとつであるLeucine-rich repeat kinase 2(LRRK2)は、可溶性タンパク質であるが、細胞内のミトコンドリアや輸送小胞などの膜上に局在することが知られている。しかしながら、膜局在の意義はよくわかっていない。 LRRK2を過剰発現するHEK293細胞を細胞質画分と膜画分に分画したところ、いずれの画分にもLRRK2が存在することが確かめられた。また、それぞれの画分からLRRK2を免疫沈降し、そのキナーゼ活性を解析したところ、いずれの画分でも同程度の活性を有することが明らかになった。最終年度において、両画分に存在するLRRK2の二量体化をBlue-Native PAGE法により検討したが、特に差異は認められなかった。 LRRK2の膜局在の意義を解析するため、低分子化合物であるAP21967依存的にLRRK2を膜に局在させるchemical-induced localization(CIL)実験系を確立した。これは、mTORのFRBドメインとFKBPがrapamycin存在下で特異的に相互作用する性質を利用している。初年度において、2xFKBP-LRRK2-2xMycを恒常発現するHEK293細胞を樹立した。最終年度では、LRRK2を各種オルガネラに移行させたときのオルガネラや細胞の形態変化を観察した。この細胞にFis1-FRB、TOMM20-FRBを過剰発現させると、LRRK2がミトコンドリア膜上に移行した。Lyn-FRBの共発現では細胞表面膜の細胞質側、PMP34-FRBではペルオキシソーム、LAMP1-FRBではリソソームの膜上にLRRK2が移行した。しかしながら、LRRK2のキナーゼ活性依存的に形態変化などを生じたオルガネラはなかった。
|