研究課題/領域番号 |
24790071
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
平田 美智子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40544060)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 骨粗鬆症 / エストロゲン / アンドロゲン / 受容体作働薬 |
研究概要 |
骨代謝は性ホルモンにより制御され、女性では閉経により女性ホルモン(エストロゲン)が欠乏すると閉経後骨粗鬆症、男性では加齢により男性ホルモンが低下すると老人性骨粗鬆症を発症する。これまでにカルボラン化合物が、閉経後骨粗鬆症モデルマウスにおいて骨組織選択的な骨量回復作用を示すことを見出した。そこで、本研究課題では、性ホルモン受容体への結合予想を計算科学的に得た、新規のカルボラン化合物であるBA321とBA341を用い、その生理活性評価、骨組織への特異性と有効性評価、生殖器への作用評価を検証し、性差を超えた新規骨粗鬆症治療薬の創生を目指している。 平成24年度は、BA321ならびにBA341のアンドロゲン受容体およびエストロゲン受容体への結合解析を行なうと共に、男性骨粗鬆症マウスへの有効性に関する予備検討を実施した。その結果、アンドロゲン受容体への結合活性は、BA321とBA341は強力な結合活性を示し、その強度はジヒドロテストステロンとほぼ同等であった。また、エストロゲン受容体への結合活性は、エストラジオールを100として比較すると、BA321は0.23、BA341は0.045であった。従って、類似構造のカルボラン化合物でも、置換基の相違により結合活性が変化することが明らかとなった。次に、アンドロゲン応答配列を介した転写活性を検討したところ、BA321とBA341はアンタゴニスト活性を示し、ヒドロキシフルタミドの約10倍のアンタゴニスト活性を有することが明らかとなった。さらに、男性骨粗鬆症モデル動物として雄性マウスに精巣摘出(ORX)を施した解析において、BA321投与群はORXと比べ大腿骨骨密度の回復が認められ、新規骨粗鬆症治療薬としての有効性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度、当初計画である、BA321とBA341のアンドロゲン受容体およびエストロゲン受容体への結合解析ならびに男性骨粗鬆症マウスへの有効性に関する予備検討を実施し、強力なアンドロゲン受容体への結合活性を有すること、エストロゲン受容体への結合活性は、弱いことを明らかにした。さらに、男性骨粗鬆症マウスへの有効性の解析においては、精嚢腺重量に影響を示さず、大腿骨骨密度の改善効果を示すカルボラン化合物の投与量を検討するための予備検討を行い、BA321がその候補化合物として有効である可能性が得られた。また、この当初計画に加えて、BA321に対して最適投与量での雄性マウスに精巣摘出(ORX)を施した解析も行い、BA321は生殖器への作用は認められず、ORXと比べ大腿骨骨密度を回復させることが明らかとなった。これら成果は平成25年度の本課題を円滑に進め、より前倒しの課題実施を可能とした。これら理由により、当初の計画以上に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の成果により、新規カルボラン化合物BA321は新規骨粗鬆症治療薬としての有効性が示唆されたため、平成25年度は、主としてBA321が男性と女性の双方に対して効果を示す、性差を超えた新規骨粗鬆症治療薬となり得るかを検討する。具体的には、男性骨粗鬆症モデルマウスと女性骨粗鬆症モデルマウスを用いて、候補化合物を投与し、生殖がんのリスクを回避し、骨作用を示す新規カルボラン化合物を明らかとする。また、BA321が骨選択的にアンドロゲン様作用を示すか、エストロゲン様作用を示すかを明らかにするため、以下の実験系における投与実験を実施する。 (1)男性骨粗鬆症モデル動物を用いた解析:男性骨粗鬆症モデル動物として、雄性で精巣摘出(ORX)マウスを作製する。比較対照として擬手術マウスを用いる。術後4週において、大腿骨と精嚢腺を摘出する。大腿骨の解析は、破骨細胞の分化と骨密度解析、CT解析により評価する。男性生殖器への作用として精嚢腺を重量計測し、組織切片の作製により病理学的に観察する。 (2)女性骨粗鬆症モデル動物を用いた解析:女性骨粗鬆症モデル動物として、雌性で卵巣摘出(OVX)マウスを作製する。比較対照として擬手術マウスを作製する。術後4週において、大腿骨と子宮を摘出する。大腿骨の解析は上記(1)の場合と同様に行う。女性生殖器への作用として、子宮重量を計測し、病理学的解析を行う。 (3)生殖器作用を示さない確証実験: 新規カルボラン化合物が生殖器作用を示さないことを性成熟前の幼若マウスへの投与実験で検証する。 以上、研究計画あるいは研究を遂行する上での障壁はなく、順調に課題を実施している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|